Criteoは、デジタル広告ソリューションなどを提供する独立系のアドテクノロジー(広告技術)企業。フランス・パリで2005年に創業し、現在は世界24カ所に拠点を構える。従業員数は3500人以上、顧客数は1万8000社以上で、1日当たりの広告配信数は50億件に達する。
2018年6月には、デジタル広告における機械学習(ML)技術の構築、実験、大規模導入に特化した研究開発拠点として「Criteo AIラボ」を設立。汎用(はんよう)性と透明性を確保したユーザー中心型のMLモデルの構築に向けた研究に取り組んでいる。
Criteo AIラボの所長でエンジニアリング担当バイスプレジデントのRomain Lerallut氏は、「映画のレコメンドサービスを提供していた創業当初からAIを活用してきた」と話す。同氏によると、Criteo AIラボにはエンジニアと研究者を合わせて140人程度が在籍している。AIラボの研究成果は、同社のプラットフォームに反映されていくという。
「Criteo AIエンジン」は、同社が取り扱う40億件を超える商品SKUと3700種類以上の商品カテゴリーを対象に、毎日7億人に及ぶアクティブユーザーの行動データをリアルタイムに分析している。これにより、消費者に合わせてカスタマイズした関連性の高い広告を作成し、配信タイミングを最適化する。広告キャンペーンの成果を最大化し、それぞれの目標に応じた成果を得ることができるという。
現在は、生成AIを活用したチャットボット内での広告配信の検証や社内の顧客対応サポートなどに取り組んでいるという。また、将来のサードパーティークッキーの廃止に対応するため、AI技術の積極的な活用を進めている。
AIはアドレサビリティー戦略を支える強力な技術
Googleは、ブラウザー「Chrome」でのサードパーティークッキーの段階的廃止を発表している。Chromeは国内外で約6割のシェアを占めており、強い影響力を持っている。サードパーティークッキーの廃止後に関連性の高い広告配信を可能にするには、包括的かつ多角的なアドレサビリティーの確保が必要になる。
アドレサビリティーとは、「デジタル広告の到達可能性」を意味しており、個人情報の保護やプライバシーの強化をはじめとする規制の強化や厳格化により、広告の配信精度が低下するなど大きな影響が懸念されている。
Criteoは、そうしたアドレサビリティーの課題に対応するため、3つの柱からなる多面的なアプローチをとっている。具体的には、(1)ファーストパーティーデータの活用、(2)Google プライバシーサンドボックスへの参加、(3)クローズド環境の整備――になる。
プロダクト担当バイスプレジデントのArnaud Chataignier氏によると、同社は独自のファーストパーティーデータネットワークをデマンド側(広告主)とサプライ側(媒体社)の両方で構築している。メールアドレスなどをハッシュ化するソリューションなどを使用することで、プライバシーに配慮したデータの有効活用を可能にしている。
また、同社はプライバシーサンドボックスでGoogle Chromeチームのリーディング・パートナーを担っており、「Protected Audience API」「Topics API」「Attribution Reporting API」という3つのAPI活用に向けて、さまざまなタイプの広告キャンペーンのパフォーマンスを評価するテストを実施している。これにより、リターゲティングや関心ベースの広告の配信、効果測定を、サードパーティークッキーを使用せずに実現することができるとしている。
クローズドな環境についても、同社が構築するリテールメディアネットワークを介して200以上の小売業者や、Metaをはじめとするソーシャルメディアへのアクセスを提供している。
「AI技術は、Criteoのアドレサビリティー戦略を下支えし、より効果を高めることができる」とChataignier氏は話す。Lerallut氏も「クッキーレス時代になったとしても、AIを活用してより関連性の高い情報を提示できると考えている」と強調した。
Criteo AIラボの所長でエンジニアリング担当バイスプレジデントのRomain Lerallut氏(右)とプロダクト担当バイスプレジデントのArnaud Chataignier氏