1995年の営業開始から、事業領域を拡大しつつ日本のインターネットを牽引してきたインターネット事業者のGMOインターネット。同社では、パブリッククラウド・サービス「ConoHa」をリニューアルするに当たり、ハードウェア基盤として「Dell PowerEdge」を選択した。年々競争が激化するクラウド市場で競争力を高めるために、GMOインターネットが選んだ解決策とは何か。GMOインターネットの斉藤弘信氏に「Interop Tokyo 2016」の会場でお話を伺った。
OpenStackの成長とユーザーの声を受けてリニューアルを決断
GMOインターネットが「ConoHa」のサービスを開始したのは、2013年のこと。企画段階を含めると2年間を待たずにリニューアルを決定したわけだが、その背景を斉藤氏は次のように語る。
GMOインターネット
テクニカルエバンジェリスト
斉藤弘信氏
「まず、クラウド構築基盤であるOpenStackの成長が短期間で急速に進んだことがあります。もともとConoHaはOpenStackで構築していましたが、利用しているのは仮想サーバー・サービスのNovaくらい。ですから当初のConoHaは、VPS(仮想専用サーバー)サービスという位置づけで、クラウドとは名乗っていませんでした。これは、当時のOpenStackがまだ未成熟だったということもありますし、サービス内容をシンプルにして提供価格を抑えるという意図もありました。ところが、OpenStackはわずかな間に機能を拡充し、どんどん成熟していく。新しいOpenStackで機能強化を図りたいという思いが強まると同時に、それを後押しするユーザーの声も強くなってきました。“クラウド”の概念が浸透するにつれて、追加のブロック・ストレージを利用したいなど、サービスの拡充を求める声が寄せられるようになったのです。そうした要望に応えるかたちで、今回のリニューアルが企画されたわけです」(斉藤氏)
SDSを採用してストレージコストを大幅カット
リニューアルの目標として掲げられたのは、高速かつ安価なサービスを実現することと、マルチリージョン(日本、米国、シンガポールの3拠点)で均質なサービスを提供することだった。
1つ目の要件「高速かつ安価」を満たすため、まずは「オールフラッシュ&SDS」という方向性が決まった。すなわち、コンピューティング・サーバーと外部ストレージでSSDを全面採用して高速化しつつ、外部ストレージをSDS(ソフトウェア定義ストレージ)で構築することで、コストダウンを図るという構成である。
もっとも、ひと口にSDSと言っても、さまざまな種類があり、それぞれ特性が異なる。比較検討を重ねた結果、GMOインターネットはNexenta社の「NexentaStor」を採用することにした。NexentaStorは、ファイルシステムとしてSolaris由来のZFSを採用するSDSだ。
「当社にはSolarisで育ったという技術者が多く、Solaris/ZFSの構築・運用ノウハウが蓄積されています。そして、NexentaStorは、OpenStackに標準で対応していました。具体的にはOpenStackのCinder(ブロック・ストレージ管理サービス)に対応するドライバーが用意されていたのです。これらのことから、今回のリニューアルにぴったりだと考えました」(斉藤氏)
ちなみに、分散ファイルシステム型のSDSも検証したものの、「SSDの高速性を活かしきる構成に辿りつけなかった」(斉藤氏)ことから、採用を見送ったそうだ。
クラウド基盤への適性の高さでDell PowerEdgeを選択
さて、ハードウェア側の選定では、コンピューティング・サーバーにはIntel® Xeon® プロセッサーを搭載した「Dell PowerEdge R630」を採用した。
「Dell PowerEdge R630のいいところは、1Uながら筐体内に十分なSSDを搭載できる点です。2ソケットでコア数も多いので、従来に比べて仮想サーバーの集積率を25%も向上させることができました。1台の物理サーバーで稼働できる仮想サーバーの数が増えれば、それだけサービスの提供コストを下げることができるので、競争力の強化に大きく貢献してくれています」(斉藤氏)
一方、ストレージ・サーバーには「Dell PowerEdge R720xd」を採用し、ハードウェアRAID+SSDという構成にした。2Uサイズで拡張性の高いPowerEdge R720xdは、SDSの構築基盤としてうってつけの製品だ。ちなみに、PowerEdge R720xdはHDDとの組み合わせでバックアップ・サーバーにも利用している。
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グローバルなサポートが運用の標準化に貢献
GMOインターネットがデルを選択した理由には、リニューアルのもう1つの要件であったマルチリージョン対応も関係している。
「デルのサポート・サービスは、グローバルで標準化されていて、日本、米国、シンガポールのいずれでも、同じサービスが同じように受けられます。トラブル発生時の対処法など、日本で作ったワークフローがそのまま海外にも適用でき、運用を標準化することができました」(斉藤氏)
サービス構築時にはSSDのトラブルに見舞われたものの、サービスを開始してからは約1年半ほぼノートラブルで稼働しているという。このConoHaリニューアルの成功を受け、GMOインターネットでは、「Z.com」など他のパブリッククラウド・サービスでもDell PowerEdge+OpenStackの組み合わせを採用しているそうだ。
デルは、レッドハットとのOpenStackリファレンス・アーキテクチャーの共同開発や、OpenStackをはじめとするオープンソース製品の共同検証を行うためのアライアンス活動などを通じて、OpenStackに関する情報提供を積極的に行っている。ベンダーの選定においては、製品の性能・品質が高いことはもちろんだが、それと同じくらい顧客にいかに有用な情報を提供できるかが、重要になってきていると言えるだろう。
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