海外コメンタリー

マイクロソフトのオープンソース特許ネットワークOIN加盟--その意味するところとは?

Steven J. Vaughan-Nichols (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2018-10-18 06:30

 MicrosoftがOpen Invention Network(OIN)に加盟し、同社の特許ポートフォリオを提供した結果、テクノロジ分野を取り巻く世界の状況は大きく変化することになった。オープンソースに関連するものすべてを敵視していた同社が今や、オープンソースを利用し、オープンソースに貢献するのみならず、6万件にものぼる同社の特許を他のOINメンバーに開放し、Linuxシステム上でロイヤリティフリーで利用できるようにしたのだ。さらに重要なのは、OINメンバーがパテントトロールから身を守るために同社の特許を利用できるようになるという点だ。

その本当に意味するところ

 では、MicrosoftのOIN加盟が本当に意味するところを見てみることにしよう。

 詳細を論じる前に、筆者は弁護士ではないという点に注意していただきたい。また筆者は、オープンソースソフトウェア関連の法的なニュースを扱うウェブサイトGroklawの編集者を務めていた旧友のPamela "PJ" Jones氏のようなパラリーガル(弁護士補助職)というわけでもない。しかし筆者はこの件について、知的財産(IP)に詳しい数多くの弁護士と話をしてきた。本記事の内容は、MicrosoftのOIN加盟が意味するところの核心とも言うべきものだ。ただし現実的な助言が必要だという場合には、IP分野に詳しい弁護士に相談するようにしてもらいたい。

 まず、OINとの取り決めの対象となっているのは、Microsoftの特許すべて(そう、すべて)だ。Microsoftは自社の特許ポートフォリオ全体を、Linuxシステムなどを特許関連のリスクから保護することを目的としたOINのライセンス被許諾者に提供するのだ。同社は合計すると9万件の特許を有しているが、現在承認されているのは6万件のみであり、残りの3万件は米特許商標庁(USPTO)の承認待ちとなっている。このため、USPTOに出願中の特許は今回、提供されない。ただ同社によると、承認が得られ次第、これらも提供していく予定だという。

 では例えば、MicrosoftのOIN加盟によって、FATやexFAT、VFATに関係する特許も提供対象となるのだろうか?Microsoftのコーポレートバイスプレジデント兼IPグループ主任法務顧問であるErich Andersen氏は、「『Linuxシステム』上で読み込める、当社の特許はすべて提供される」と回答している。

Linuxシステムとは何か?

 OINの定義によると、LinuxシステムはLinuxカーネルのほかに、その他多くのオープンソースパッケージを含んでおり、これらは概してLinuxの一部と見なされている。

 具体的には、OINは以下のように述べている。

 「Linux System」とは、Linux環境を構成するコンポーネント(Linux Environment Component)、あるいはそういったコンポーネントの任意の組み合わせであり、各コンポーネントは(i)オープンソースライセンス(OSL)の下で、またはパブリックドメインとして一般利用が可能になっており(そしてそういったコンポーネントのソースコードの一般利用が可能になっており)、かつ(ii)Linuxカーネルとともに配布されている、あるいはLinuxカーネルとともに利用するために配布されているもの(もしくはLinuxカーネル自体)をいう。

 とは言うものの、特許関連の企業コンソーシアムであるOINは、一般的にLinuxの一部だとは考えられていないその他のオープンソースプログラムも保護している。例を挙げると、Linux上で実行されるオープンソースソフトウェアも保護対象となる可能性がある。確信が持てない場合、IP分野の担当弁護士にOINの対象かどうかを確認してもらうのがよいだろう。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. 運用管理

    メールアラートは廃止すべき時が来た! IT運用担当者がゆとりを取り戻す5つの方法

  2. セキュリティ

    ISMSとPマークは何が違うのか--第三者認証取得を目指す企業が最初に理解すべきこと

  3. セキュリティ

    経営陣に伝わりづらい「EDR」の必要性、従来型EDRの運用課題を解決するヒントを解説

  4. セキュリティ

    AIサイバー攻撃の増加でフォーティネットが提言、高いセキュリティ意識を実現するトレーニングの重要性

  5. ビジネスアプリケーション

    中小企業のDX奮闘記--都市伝説に騙されずに業務改善を実現したAI活用成功譚

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]