“自分”が答えられない質問を受けると、ソーシャルネットワークに参加している“同類”に教えを求め、正しい情報を入手して即座に返答する。現在はお互いの知見や情報を交換するだけだが、将来的には“同類”同士で教え合い、自律的に賢くなっていく。実はこれ、チャットボットの話だ――。
特定ドメインのチャットボットは知識が狭い
米Avayaは、10月14日から5日間の日程で開催された「GITEX Technology Week 2018(GITEX 2018)」(開催地:アラブ首長国連邦=UAEドバイ)でチャットボット同士がやり取りする“ソーシャルネットワークプラットフォーム”を公開した。同社ではソーシャルネットワークプラットフォームを「情報コラボレーションを目的としたネットワーク」と位置づけている。個々のチャットボットが持つ専門知識をプラットフォーム上で“融通”し合い、顧客対応を迅速にすることで、(導入企業が擁する)顧客の満足度向上につなげたい考えだ。
同プラットフォームの開発を統括したAhmed Helmy(アメッド・ヘルミー)氏は「チャットボット同士がやり取りすることは、ユーザーだけでなく、導入企業にとっても大きなメリットになる」と力説する。
米Avayaで欧州中東アフリカ(EMEA)とアジア太平洋(APAC)の地域担当ソリューションアーキテクトを務めるAhmed Helmy氏。同氏はブロックチェーン技術を利用した情報収集分析ソリューションも開発した
近年、顧客の問い合わせに対し、チャットボットを活用したセルフサービスを導入する企業が増加している。日本でも銀行の一般的な案内や配送サービスの領域などで活用されている。ただし、そこには大きな課題がある。それは「企業で利用されているチャットボットは特定の専門分野には詳しいが、知識の範囲が狭い」ことだ。
チャットボットのエンジンとなる人工知能(AI)は、継続的なトレーニングで精度が向上する。チャットボット(AI)が賢くなればなるほど、ユーザーはチャットボットに対して複雑な質問をするようになるという。「つまり、特定分野の専門知識だけでは、今後チャットボットは顧客の要求に対応できなくなるのだ」(Helmy氏)
病院のチャットボットが保険会社のチャットボットに問い合わせ
Avayaは2018年1月、チャットボットと自然言語処理(NLP)を活用したAIの「Avaya Ava」を発表している。Avaはソーシャルメディア、チャット、メッセージングチャネルを使用してエンドユーザーとのやり取りを可能にするものだ。米Googleの翻訳機能とも連携しているので、ほぼすべての言語で利用できる。
今回公開されたソーシャルネットワークプラットフォームは、Avaを介してユーザーとやり取りする。例えば、Avaを導入している顧客企業が病院だったとしよう。その病院に通う患者が、保険会社のサービスを利用して治療を受けたいとする。その仕組みはこうだ(下図参照)。
ソーシャルネットワークプラットフォームの概要(著者作成)
- 患者は病院の問い合わせ窓口に対し「新たな治療には保険制度を利用したいが、その内容教えてほしい」と問い合わせる
- 病院のチャットボットには保険に関するデータや情報がない。その場合、チャットボットがソーシャルネットワークプラットフォームに質問内容を投稿する
- ソーシャルネットワークプラットフォームに参加しているチャットボットで質問に答えられるデータや情報を持つ者(上記図の場合は保険会社)がその質問に回答する
- 病院のチャットボットは得られた回答を患者に対し、Avaを介して患者に返答する