メタデータでシステム資源を効率運用、EMCのCTOが展望

日川佳三

2005-02-14 18:28

 ストレージ大手の米EMCのJeffrey M. Nick最高技術責任者(CTO)は2月14日、データ管理手法の技術展望を語った。業界団体を通じてデータ管理モデルの標準化を進める意思を示すとともに、自社製品では今後数カ月から1年の間に製品同士を連携させて相乗効果を高める方針を示した。

 米EMCほかストレージ業界は現在、ストレージ製品やストレージ・ネットワーク製品など個々のシステム資源を運用負荷をかけずに効率的に使うための仕組みを構築しつつある。このために鍵を握るのは、詳しくは後述するが、システム資源の仮想化やメタデータによる管理インタフェースの抽象モデル化である。

上席副社長兼最高技術責任者のJeffrey M. Nick氏

 従来、情報システムが抱えていた問題点としてJeffrey氏は「これまでベンダーはセマンティック(Semantic、メタデータによる意味付け)を用意してこなかった」と触れた。資源の仮想化やミドルウェアの充実などデータ管理のための基礎や基盤は整っているが、データをどう管理して運用していくのかというポリシーがシステム上に実装されていないというわけだ。

 そこでEMCなどストレージ業界は現在、データの属性をメタデータとして記述するための記述方法を定義して標準化作業を進めている。メタデータがあればデータの運用を自動化できるからだ。「物理資源の集合であるシステムを別の用途に適応させるために簡単に分解・再構成できるモデルを作り上げる」(Jeffrey氏)

 データ管理の枠組みを固めるための一環として米EMCは、システム資源全体を管理する製品群を揃えるために関連企業を次々と買収してきた歴史を持つ。こうした企業には、バックアップなどデータのライフサイクルを管理する米LEGATO Systems、コンテンツ(文書)管理の米Documentum、システム資源管理の米SMARTSなどがある。

 Jeffrey氏はさらに、業界団体への働きかけの例として、ストレージ管理技術(SMI-S)や情報ライフサイクル管理(ILM)などの標準化を進めるSNIA(Storage Networking Industry Association)を中心に、CIM(Common Information Model)などモデリング言語の標準化を進めるDMTF(Distributed Management Task Force)、Webサービスの標準化を進めるOASIS(Organization for the Advancement of Structured Information Standards)への働きかけに注力している点を強調した。

 メタデータの記述方法を標準化してシステム資源の運用効率を高めるための前提としてJeffrey氏は、仮想化、グリッド・コンピューティング、ユーティリティ・コンピューティング、Webサービスについて語った。それぞれの意味と位置付けは以下の通りである。

 仮想化とは、物理的な資源を論理的に捉えられるようにする技術である。資源にアクセスするためのインタフェースを定義して複雑な実装を単一のビューで見渡せるようにする。仮想化によってアプリケーションを仮想資源から仮想資源へと移行(マイグレーション)することが可能になる。

 グリッド・コンピューティングとは、複数のコンピュータを使って単一のコンピュータよりも多くの情報処理を実行する技術である。動作形態としては、個々のコンピュータが独立して動作する形態から、マルチプロセッシングのようなコンピュータ同士が密に連携し合う形態まで幅広い。

 ユーティリティ・コンピューティングとは、CoD(Capacity on Demand)とも呼ばれ、利用した情報処理資源の量に応じて課金する技術である。アプリケーション負荷の増減に応じてCPU割り当て数を増減させるといった使い方が採られる。

 Webサービスは、資源の抽象モデル化をサービスの層にまで進めた技術で、SOA(Service Oriented Architecture)と呼ぶ略語で語られる。コンピュータ内部での関数/クラスやコンポーネント同士の連携ではなく、ネットワーク上に分散したコンピュータ同士がHTTPやXMLなどのウェブ技術のインタフェースで連携し合う形態を指す。

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