第3回 EAを特徴づける4つの考え方

相原 慎哉(みずほ情報総研) 2005年04月15日 10時00分

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 エンタープライズアーキテクチャ(EA)の考え方は、過去のソフトウェア工学や経営学、そしてシステム構築の実践を通じて蓄積されてきた種々のノウハウを取り込んで作られている。そのため、使われる図表やモデル、手順や手法の中には、これまでに広く用いられてきたもの、比較的新しいものなど、さまざまなものが混在している。

 したがってEAの中には新しい部分も古い部分もある。単に新しければよいというわけではなく、古くても良いものは積極的に使うのがEAの考え方である。このため、EAはこれまで唱えられてきたいろいろな考え方や手法と似通っている部分もあるし、異なる部分もある。整理すると、以下の4つがEAを既存の手法や考え方と異なるものにしている大きな特徴だといえそうだ。

1. ビジネスとITの連携

 EAでは、ビジネスとITを結びつけることを目指す。ビジネスアーキテクチャとITアーキテクチャを関連づけて一つの体系として取り扱う。これまでのITの取り組みでは、現場のニーズに応えるのみにとどまり、経営のニーズには応えられていないケースが少なくない。EAでは、ビジネスの要求や変化が適切にITに反映され、ITの技術進歩が迅速に活用できるような仕組みを作る。したがって、IT部門だけの取り組みではなく、経営企画部門や経営層などビジネス側主導で行われるケースも多くなる。

2. 全体最適

 EAは対象とする組織単位のなかでの全体最適を図ることを目指す。個々のユーザーの利益だけではなく、組織全体の利益を重視するのも重要な特徴である。EAでは、部門ごとのシステム、業務ごとのシステム、ユーザーごとのシステムがそれぞれの枠組みの中で最適化されることを避け、組織全体のシステムとしてどのようなシステムが望ましいのかの理想像に近づけようとする。具体的には、データの一元化、相互運用性確保、標準への準拠、共通機能の共用化、システムの適切な統合と分散などがあげられよう。

3. 標準化されたコミュニケーション基盤

 共通フォーマットでのドキュメント化、モデル化も重視される。作成されたドキュメントが標準化されたコミュニケーション基盤となる。すなわち、ビジネスとITにまたがる組織の設計図(モデル)を文章や図表にして共有可能にすることで、経営層、ユーザー部門、IT部門など様々な背景と異なる知識を有する関係者間での理解とコミュニケーションを容易にする。

4. 中長期計画とガバナンス

 EAは常に中長期的視点で計画的に改善を続ける。将来のあるべき姿、そこへ近づくための移行プランを作成することで、常に中長期的視点を保ちつつ、正しい道筋をたどるための制度や体制、ガバナンスを整備して実行していく。それぞれのEA成果物は作ったら終わりではなく、定期的なメンテナンスを行う。作成したEAの改善は継続的なサイクルとして行われることが基本である。

 これら4つの考え方は、EAの中核をなすものである。一見同じ作業を行う場合でも、背景にある考え方が違えば全く異なる結果が生じる。EAの実践においては、これら4つの考え方がどこまで徹底されているかが大きなポイントとなるだろう。

(みずほ情報総研 EAソリューションセンター シニアシステムコンサルタント 相原 慎哉)

※本稿は、みずほ情報総研が2004年6月22日に発表したものです。

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