サンフランシスコ発--Microsoftは米国時間15日、新しいスパイウェア対策ソフトウェアを顧客に無償で提供することを明らかにし、有料モデルに移行するか否かをめぐって飛び交っていた推測に終止符を打った。
この発表は、Microsoft会長のBill Gatesが、当地で開催中のRSA Conference 2005の幕開けとなる基調講演のなかで行ったもの。同社はこれまでAntiSpywareアプリケーションのテストを続けてきたが、これは同社がセキュリティソフトウェアメーカーのGiant Software買収時に取得した技術だ。
「スパイウェア退治が今日では欠かせないことから、われわれは正規ライセンスを受けたWindowsのユーザー全員に対し、この保護技術を無償で提供すべきだとの結論に達した」(Gates)
このスパイウェア対策の試みは、家庭や企業で使われているWindowsのセキュリティ強化を目指すMicrosoftの取り組みの一環。消費者は、スパイウェア、ウイルス、フィッシングといった脅威の危険性に必ずしも気付いているわけではない。昨年10月には、消費者の80%以上がスパイウェアに感染しているとする調査結果が公表されていた。
Microsoftは、3年前に開始したTrustworthy Computing Initiativeによって、ソフトウェア全般のセキュリティに注意を払うようになったが、消費者にもその目を向け始めたのはMSBlastワームが数百万台のPCに感染した1年半前のことだ。このワームは、「Billy gates why do you make this possible?Stop making money and fix your software!(Gatesくん、何でこんなことができてしまうのかな?金儲けばかり考えず、ソフトを直しなさい!)」というメッセージで、Microsoftの創業者をからかっていた。
Microsoftは、Windows AntiSpywareアプリケーションのベータ版を先月発表した。同アプリケーションは Windows PCをスパイウェアから保護するように設計されている。スパイウェアは、所有者が気づかないうちにコンピュータにインストールされ、ポップアップ広告を表示したり、ウェブ閲覧の操作を記録する。
Windows AntiSpywareは、Microsoftにとって寝耳に水だった脅威に対する同社の回答といえる。Gatesは、同社がこの脅威を昨年初めて察知したこと、ならびに今年は昨年より一段と力を入れる必要があることを認めた。
「これまでのような(脅威の)大規模な感染を確実に阻止するために、われわれは対策を大幅に前進させる必要がある」(Gates)
Gatesは、同社がGiant買収により「SpyNet」と呼ばれる貴重なスパイウェアレポートネットワークも手に入れたことを明らかにした。同ツールは、ネットワークに接続されたPC上でスパイウェアの可能性があるものを割り出した上で、それを除去するかどうかを顧客に訊ね、あわせてMicrosoftには削除されたコードの種類を報告する、というもの。
「われわれは現在、どんな(タイプの悪質な)ソフトウェアがダウンロードされているかを把握でき、定義ファイルを最新の状態にしておくことも可能だ」とGatesは述べ、同社がSpyNetからスパイウェアに関する報告を1日に50万件入手していると付け加えた。同氏によると、このSpyNetプログラムには300万人近いユーザーが参加しているという。
あるセキュリティ対策企業は、Microsoftの発表を歓迎しつつも、同社がセキュリティ対策ソフトウェアの分野に進出してくることに警戒感を示している。
「Gatesがデスクトップのセキュリティを重視していることを知って嬉しく思う」とCheck Point Softwareの最高技術責任者であるGregor Freundは述べた。同社はデスクトップ用のセキュリティ対策ソフトウェアを開発している。「しかし、Microsoftのアプローチに深刻な問題点もいくつかある。同社がセキュリティ(製品)市場に参入しただけで、ベンチャーキャピタルによるWindows用セキュリティ製品への投資がすべて凍結され、技術革新が止まる可能性もある。そうなれば、長期的にはセキュリティが強化されるのではなく、逆に弱まることになってしまう」(Freund)
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。