切っても切り離せないベリタスとの関係--シマンテックCEOのJohn Thompson氏

別井貴志(編集部)

2005-04-28 13:41

 米VERITAS Softwareの「VERITAS VISION 2005」の最終日は、ついにVERITASを買収する米SymantecのCEOであるJohn Thompson氏が基調講演した。大きな拍手で迎えられた同氏はまず「この場に招かれて大変光栄だ」と挨拶した。会場は歓迎ムードの方が強く、具体的なことは合併が完了するまで話せないからか、同氏は例を交えて話すものの合併の詳細については抽象的な話ばかりに終始した。

SymantecのCEOであるJohn Thompson氏

 John Thompson氏は、以前米IBMの役員として、企業や政府機関向けに電子商取引の事業やストレージビジネスなどを手がけていた。そのため「私にとっては帰省したような気分だ」と述べた。そして、「およそ30年前はIBMのセールスを束ねていたが、駆け出しのころ首になるぐらいの大失敗をしたことがある」と打ち明けた。「初めてデータセンターに行ったときに、丸い物を取って外してしまった。ところがそれは磁気ディスクで、システムをクラッシュさせた原因を作ってしまった」と言う。この出来事でThompson氏が学んだのは、システムの危機はいろんなところにあり、システム障害が起きにくく利用可能な状態を保ち続ける能力、いわゆるアベイラビリティとセキュリティの関係が非常に重要だということだ。

 そう説明したうえで、VERITASとの合併については「ITの将来を見据えての決定だ」と語り始めた。どんな規模の企業であろうが、情報が一番価値を有する時代になったので、顧客もビジネスも成長するためには情報が不可欠で、どんな組織でもITインフラストラクチャを通じた情報はすべてリカバリーできて、セキュアでなければならないというわけだ。そのため「情報を資産価値にするためには、セキュリティとアベイラビリティを組み合わせて融合させ、さまざまなリスクに対処することが重要だ。その手伝いが2社の合併で提供できる」とした。

 企業を取り巻くすべてのリスクから企業システムを保護することが重要な例として2つ挙げた。1つは2003年1月23日の起きたSQLスラマーによる企業へのウイルス大感染だ。Microsoftのデータベースソフト「Microsoft SQL Server」の脆弱性を突いて感染するコンピュータウイルスで、8.5秒ごとに2倍の速度で増殖し続けた。最初の10分間で世界で感染する可能性のあるサーバの90%に感染したと見られている。航空会社やATMが影響を受けてビジネスがすべて停止した。きちんとしたかたちで復旧するのに10億ドルかかったとされたうえ、企業の生産性は大きく低下して顧客の信頼感も失った。

 もう1つの例は、企業はスラマーによって教訓を得るべきだったにもかかわらず、再度カリフォルニアの大停電で企業活動の停止に陥ったことだ。つまり、このようにシステムにおける脅威や弱点など企業のリスクはさまざまなで、「セキュリティはもちろんのこと、ストレージやネットワーク管理は切っても切り離せない関係だ」と言うわけだ。セキュリティだけがしっかりしていても、アベイラビリティに心しないと「自分の大切な物を金庫にしまったが、金庫がどうやっても開けられないということと同じだ」と強調した。そして、「セキュリティとストレージ管理、ネットワークをシームレスにつないで、初めてリスクとコストのバランスを取れる」と語った。

 また、今後の企業システムへの展望として、ハリケーンを例に挙げた。「私はフロリダに住んでいたが、ハリケーンがやってくるときにはレーダーに感知されるので、だいたい何時頃に自分の家を襲ってくるかが把握できる。事前にその情報をテレビやラジオで察知しているので、82歳になる郵便局員の父は当時よく準備や対応を進めて守ってくれた。これがIT資産だったら、一連の作業をすべて自動化して保護すればビジネスの連続性を確保できるだろう」

 このように例を挙げて説明し、「ITがコストとリスクを抑えて企業収益を増大させ、市場を拡大していくと考えている」とまとめた。また、すでにセキュリティとアベイラビリティの間のコンサルティングを行うモジュールを既に作り始めていることも明かされた。「まもなく発表しようとしているが、SSCS(シマンテック セキュリティ コンサルティング サービス)のことだ」として、詳細は避けた。

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