--Expressionによって、デザイナーと開発者の境界が曖昧になるということでしょうか。
いいえ。むしろ役割をしっかりと分けることが必要だと考えます。Expressionを3つの個別のツールとして提供する理由もそこにあります。リッチなUIを作るデザイナーと、コーディングを行う開発者の役割をしっかりと分けた上で、ワークフローをスムーズにつなぐことが重要なのです。XAMLによるデータの統合は、そのために不可欠だったと言えるでしょう。
--現在、グラフィックやウェブを作成するデザイナーには、アドビシステムズ(マクロメディア)のツールやテクノロジーが強く支持されています。それらに対するExpressionファミリーの優位点はどこにありますか。
ここでは、ウェブサイトを作るツールとグラフィックツールとを分けて考える必要があるでしょう。
例えばDreamweaverは、ウェブサイトを作るためのツールとして市場に導入されてから長い期間がたち、さまざまなことができる製品になっています。ただ、我々がWeb Designerの開発において注力しているのは、デザイナーが標準にのっとった形での成果物を作れるようにするという点です。もちろんそれは、マイクロソフトの技術に依存するものではありません。Web DesignerでのCSSの扱いは、Dreamweaverと比べても、はるかに信頼性が高いものです。これにより、ウェブデザイナーはクリーンなコードを生成することができ、そのコードを託された開発者は信頼できるコードを元に、より高度な開発に取り組めます。企業、法人サイトの開発にWeb Designerを使っていただければ、それは事業機会の拡大につながります。なぜならば、多くの開発者は既にマイクロソフトのツールを使っており、デザイナーと開発者がスマートに連携できるようになるからです。
Photoshopは、多くのデザイナーが伝統的に使っているツールで、写真の扱いについては非常に優れています。ですので、今後も写真に関する作業にはPhotoshopが使われていくでしょう。同様にIllustratorも良いツールですが、こちらはベクトルデータを扱うもので、印刷媒体向けの機能にフォーカスしています。また、Fireworksではベクトルとビットマップを同時に扱えますが、ウェブ上のグラフィックに特化したツールです。これらを合わせて考えると、ビットマップとベクトルデータの双方の扱いに優れたGraphic Designerと、安定した連携が行えるWeb Designerの組み合わせには大きなメリットがあると言えるでしょう。
--アプリケーションにリッチなUIを提供するという点では、Flashなども競合とはなりませんか。
Flashは、基本的にウェブ上でのコンテンツプラットフォームだと思います。それに対して、WinFXやWPFはソフトウェアのプラットフォームです。WinFXのほうが、より幅広い領域をカバーしており、機能も多岐にわたっているため、FlashとWinFXの単純な比較は困難です。WPF上でアプリケーションを作成する利点は、Windows Vistaやウェブで提供される最新APIのコアを呼び出して使えるという点です。そして、Windowsデスクトップにおいて、非常にリッチなユーザーエクスペリエンスを提供できることがWPFをベースに作られたアプリケーションの利点です。
--Expressionファミリーの現在の開発状況を教えてください。
Graphic Designer、Interactive Designerについては、英語版の開発者プレビュー版(CTP版)がリリースされており、Web DesignerのCTP版も近日中にリリース予定です。日本語版も提供する計画があります。いずれも正式な発売時期は決まっていませんが、3月にラスベガスで開催される「Microsoft MIX」というイベントでは、マイクロソフトのWeb全般についてのテクノロジーと、Expressionに関連する多数のセッションが行われることになっています。