ガートナージャパンのリサーチ部門は3月30日、2005年の国内PDA/ハンドヘルドPC市場(専用端末は除外)におけるベンダー出荷台数が、前年比18.6%減の24万5000台になったと発表した。
同市場は、2002年から4年連続で2桁のマイナス成長が続いている。過去4年間、日本市場では既存ユーザーの買い換え需要を促進するほどの製品機能の向上が見られず、個人市場を中心に撤退するベンダーが相次いでいる。
実際に2005年の個人市場出荷台数は38.3%減と、4年連続で大きなマイナス成長となった。しかし、法人市場では11.5%増とプラス成長に転換。ハンディ・ターミナルからの置き換え需要に加え、工程管理やグループウェアなどの新たな活用方法が徐々に浸透してきたことで、市場が拡大した。後者の用途では、複数のワーカーで共有していた専用機から1人1台に増設するケースもあり、これまでネットワークに接続できなかった起立型ワーカー層(小売業の販売員や流通業の現場スタッフなど、オフィスにデスクを持たないワーカー層)の情報化にもつながっている。
2005年におけるPDA/ハンドヘルドPC出荷台数をベンダー別に見ると、上位5社は、シャープ、ヒューレット・パッカード(HP)、カシオ計算機、富士通、ソニーの順。その中で2004年シェア1位だったにもかかわらず2005年7月にPDA製品の生産を終了したソニー以外のベンダーは、出荷台数を前年から増加させている。特に上位3社のシェア合計は前年の39.1%から2005年は63.1%へと増加。プレーヤーの収束が明確になっている。
1位のシャープは4年ぶりの返り咲き。PDAの老舗ブランド「ザウルス」を個人市場を主体に展開しており、主力はLinux OS搭載でキーボード付きのコンバーチブル型(ダブル・ヒンジの画面を反転させ、タブレット形状に変換可能なタイプ)の製品だ。ハードディスク搭載/非搭載の2モデルを交互にバージョンアップし、店頭での商品価値を維持する戦略が功を奏している。また、同社は2005年12月に、W-SIM(ウィルコムシム:ウィルコムが推進するPHS方式の通信モジュール「WILLCOM Core Module」の1機種)を同梱したWindows Mobile 5.0搭載製品「W-ZERO3」の出荷を開始した。PHSでの通話とPHS/無線LANでのデータ通信が可能で、回線年間契約時は3万9,800円という低価格を実現した。スライド式QWERTYキーボード、大きな画面など複数の要素も訴求し、携帯電話の高感度ユーザー層の需要を取り込んで、出足は好調だ。2005年のシャープは、W-ZERO3の12月単月での出荷増分によって、全体の出荷台数を大きく伸ばした。
2位のHPは、法人市場を主体に「iPaq」ブランドの製品を販売している。2005年世界第3位というスケールメリットを生かし、比較的低価格で幅広いラインナップを常時取りそろえることにより、多岐にわたる企業ニーズにこたえ、着実に出荷を伸ばしている。法人市場だけでは、2004年1位のカシオを抜き、ナンバーワンに躍り出ている。
3位のカシオは、法人市場に絞った展開となった。「カシオペア」ブランドでスキャナ内蔵/非内蔵の2系統の業務PDAをそろえ、物流/小売業務用途を中心に販売した。どちらも耐衝撃性、防塵・防滴性などの環境性能を備え、ハンディ・ターミナルからの置き換え需要に対応している。また、複数業務にグループウェアを付加した用途で新規需要を積極的に取り込んでいる。
ガートナーは、2005年調査結果を加味した最新予測として、2006年の見通しを予測している。それによると、2006年の出荷台数は5年ぶりにプラス成長に転じ、前年比63.1%増の40万台になる見込みという。
これは、欧米市場でPDAの市場を底上げした通話型ワイヤレスPDAの需要刺激が大きく影響するためだ。ガートナーでは、2006年前半に個人市場を中心とした出荷増加が見込まれ、後半からは法人市場向けの出荷が徐々に拡大すると見ている。また、一部の業務に限定されていた法人PDAの導入が、グループウェアの活用を軸として外勤者など企業の一般的なモバイル・ワーカーに広がるとも予想している。
ガートナーデータクエストでは、「従来型PDAは個人市場を中心に継続的な収束に向かうものの、通話型ワイヤレスPDAの増加がこれをカバーして市場は大幅に回復し、全体の60%を通話型ワイヤレスPDAが占める」と予測している。