IBMは、RFID(無線認識)タグ機器が収集する大量のデータを処理する新ソフトウェアに力を注いでいる。しかし、法律の運用いかんによっては、新技術への情熱が冷めてしまうかもしれない。
IBMは米国時間12月15日、「WebSphere RFID Information Center」を発表した。このテクノロジは、製造業、流通業、卸売業、行政通関業など、製品の関係者が共同して追跡タグからのデータを共有することが可能になる。
薬剤流通業大手のAmerisourceBergenとCardinal Health、欧州の電子通関プロジェクトITAIDE、LiptonやDove、Knorrなどのブランドを持つ大手多国籍企業Unileverなどが中心となり、実用化を視野にこの技術を試験導入する予定。
RFIDタグとは、製品の移動を追跡するため、個々の製品もしくは運搬用のコンテナに取り付けるコンピュータチップである。センサーでタグを読み取り、発送状況の監視やGPSによる緯度と経度の情報のほか、温度変化や光照射などの状態に関するアラートを送信する。
ABI ResearchのRFID技術担当リサーチディレクターMichael J. Liard氏は、「タグのハードウェアとソフトウェアに取り組んできた。当然ミドルウェアにも取り組んできたが、研究の焦点はいかにRFIDデータを収集するかということだった。現在われわれが注目しているのは『収集したRFIDデータをいかに利用するか』という点だ。それぞれの業界がこの問いに対する答えを出さねばならない時期にさしかかっている」と述べた。
IBMのソフトウェア部門でセンサーインフォメーションマネジメントを担当しているChristian Clauss氏によると、同社の新ソフトウェアはEPC Information Services(EPCIS)の技術を採用しており、UHF(極超短波)帯からHF(短波)帯までの無線タグを読み取り可能だという。各国の規制に合わせて利用する周波数帯が異なる場合があり、Electronic Product Code(EPC)による製品の符号化仕様に準拠したEPCISによって機器間の差異を吸収する。
同氏は「これまで、データのやり取りに関する標準が確立されていないことが、RFIDの大きな問題点だったが、EPCISはその問題を解決した。われわれが汎用性の高い製品を実現したことが、RFIDの普及にとって大きな転機になると見ている」と述べた。
Electronic Product Codeを推進する団体EPCGlobalは、正式な標準化団体ではない。それでもLiard氏は、EPCISの派生物が無線タグ技術業界共通の標準になるだろうと考えている。
同氏は「われわれ(RFIDタグ技術業界)はデータの収集に取り組んできたが、現在はソフトウェアとインフラに取り組んでいる。その取り組みがRFIDの実用化につながる」と述べた。