NECは、IT専門調査会社 IDC Japanによる2005年の国内Linuxサーバの出荷金額および台数の調査で、共にナンバーワン。またNECによると、同社が出荷した Linuxサーバは2006年9月末現在で6万3000台以上、そして導入顧客は累計2100サイト以上に上る。また、それだけのシステムをサポートする LinuxエンジニアはNECグループですでに7800人を超えた。
しかし、「NECはOSSの世界で闇雲にナンバーワンの座を目指しているのではありません」と堀氏は強調する。
「コミュニティや他のOSSベンダー、そして関連団体に参加して連携し、OSSエコシステムを推進し、顧客にOSSの価値を提供することが大切だと考えています」
一方、 Linuxのディストリビュータに対しては、どこか1社に限ることをせず、幅広い協業体制を敷いている。
「顧客の要求はさまざまですし、プラットフォームもいろいろです。それぞれに最適なソリューションを提供するためRed Hat、MIRACLE LINUX、MontaVista、Novell SUSE など多彩なディストリビューションを提供しています。そして、テクニカルコンピューティングではNovell SUSE、Oracleとの組み合わせではMIRACLE LINUX、組み込みではMontaVistaというように、顧客のニーズに合わせて提供するようにしています」
また、多様なOSSベンダーに対しては、それぞれのベンダーとの対応の仕方も含め、NEC自身がユーザーとベンダーとの間をスムーズに取り持つ体制を整えている。
「OSSのミドルウェアについては、それぞれのベンダーに対する接し方が異なりますので、それはNECとして一般化して対応するようにしています」
OSSミドルの補完機能など独自開発も
こうした現状を踏まえて、NECはOSSの今後の方向をどう見ているのだろうか。堀氏は、2つあると見ている。ひとつは、従来のディストリビューションの簡便性と機能性をさらに進めて、「買ってきてインストールすると、パッとWeb2.0サイトができてしまうという世界」だ。そしてもうひとつは「ミッションクリティカルなシステム」である。堀氏は「ここでもLinuxが使えるようにしたいと思っています」と言う。
この後者に対する同社のソリューションが、「エンタープライズ Linuxソリューションfor MC」だ。その基盤となったのが、これまでのUNIXベースのシステム構築の実績である。さらに同社にはHPCから携帯、組み込みの世界まで幅広い構築ノウハウがあり、性能や信頼性向上への取り組みがあった。それが、エンタープライズ Linuxソリューションfor MCの基盤になっている。
「軸になるのは、プラットフォームとSI、そしてサポート&サービスです。プラットフォームではスケールアップ型とスケールアウト型、そしてボリューム領域をカバーする多彩なサーバを用意しています。サーバについてもこのようにいろいろ品ぞろえをして顧客の多様なニーズに対応しようと考えているわけです」
また、NECはOSSを基幹システムに適用していくために、開発コミュニティ、ディストリビュータ、協業他社と連携/協調して、OSSそのものの開発に力を入れている。「特にミッションクリティカルな分野で必要なRAS機能やスケーラビリティなどのOS自身の強化を進めています」となる。
OSS推進センターの人員は170人を超え、ソースコードレベルから見ることができる技術者は、組み込みLinuxも含めて50人以上となった。
さらに、NECは独自でOSSミドルの補完機能も開発している。「性能向上ということではなく、OSSミドルを実際に基幹システムで使えるようにするためのツール」ということで、オープンDBメンテナンスや監視ツール、またアプリケーションサーバの補完機能など、障害対応や運用保守にフォーカスした機能である。「OSSミドルが現場で実際に使えるか使えないかは、むしろこうした機能で決まるのです」というツール群、ソリューション群だ。