MicrosoftのID管理システム「Windows CardSpace」に対抗するオープンソース側の取り組みは、いくつかの特許関連の問題についてMicrosoftからの承認を待ったまま、数カ月にわたり停滞している。
オープンソースプロジェクト「Higgins」に取り組む開発者たちは、Windows CardSpaceに相当するツールの作成を目指しているが、いくつかの機能についてMicrosoftから許可が得られない場合、同社が厳しい法的手段に訴える可能性もあると心配している。プロジェクトは部分的に前進し続けているものの、支持者たちによると、Microsoftからの支援がなければ、十分な機能を実現できないかもしれないという。
「いくつかの機能については、リリースを目指しているものの、実現しないかもしれない」と、Higginsのプロジェクトを率いるMary Ruddy氏は米国時間3月8日に述べた。「われわれのオープンソースプロジェクトのすべてにかかわる知的財産について、本当に違法性がないのか確認したい。そうすれば、ユーザーが安心してわれわれのコードを使用できるようになる」
Microsoftは2006年9月、Webサービス仕様約30件について特許権を主張しないと確約した。その確約はHigginsプロジェクトにとって役立つのは間違いないが、開発者たちによると、目標とするすべての機能を実現するには十分でないという。開発者たちは、Microsoftが他の知的財産についても訴えないことを保証するよう同社に求めている。
「Microsoftがわれわれに最初に与えてくれたものは、確かに素晴らしかった。ただし、われわれはCardSpaceに相当するシステムをリリースするために、もう一段の展開を必要としている」と、IBMのチーフセキュリティアーキテクトAnthony Nadalin氏は述べた。IBMとNovellは、Higginsプロジェクトの主要なスポンサー企業だ。
Higginsプロジェクトは2006年11月、Microsoftに対する公式の要請文を公開した。Higginsの開発者たちによると、その後議論が行われて多少の進展があったものの、Microsoftは依然としてプロジェクトの障害になっているという。
HigginsプロジェクトがCardSpaceと互換性のあるID管理システムを開発していることについて、Microsoft側も喜んでいると、同社の関係者は電子メールによる声明の中で述べ、次のように記した。「MicrosoftはID管理の分野に関し、互換性があり、安全で一貫した消費者の体験を目指して尽力している」
Microsoftの関係者は、同社が今後もHigginsプロジェクトとの話し合いを継続すると述べたものの、同社がオープンソースの仕様に関する確約の範囲を拡大するかどうかはコメントを避けた。
CardSpaceが目指すもの
以前は「InfoCard」という名前で知られていたCardSpaceの技術は「Windows Vista」に含まれているが、「Windows XP」でも利用可能だ。CardSpaceは今よりも簡単かつ安全にデジタルIDを使用できるようにする技術で、最終的にはインターネット上で個人を特定する手段として、ユーザー名とパスワードを使う方法に取って代わることを目指している。
Microsoftは、CardSpaceは認証情報や決済情報を一元的に管理するものだと説明し、複数のクレジットカードが入った財布にたとえている。認証や取引のために必要な情報は、PC上のCardSpaceクライアントからウェブサイトに引き渡される。