米政府は、インターネット上でPGPソフトウェアを公開したことは規制への違反になるとして、Zimmermann氏を告発した。Moglen氏は、無料でZimmermann氏を弁護し、結局、政府は訴えを取り下げた。FSFの創設者で、Zimmermann氏と同様に弁護士を必要としていたRichard Stallman氏から打診を受けたのは、Moglen氏がZimmermann氏の訴訟に取り組んでいたときだった。Moglen氏はStallman氏の場合も無料で弁護した。以後の展開は周知のとおりだ。
Moglen氏がRed Hat Summitに顔を出したのは今回が初めてではない。2006年にナッシュビルで開催されたRed Hat Summitでは、基調講演を行って衆目を集め、途中から当然とも言えるスタンディングオベーションを受けた唯一の人物だった。マサチューセッツ工科大学(MIT)で長年活躍し、「One Laptop per Child(OLPC)」プロジェクトを提唱したNicholas Negroponte氏らも講演していたことを考えればなかなかのものだ。
このときの講演でMoglen氏は、フリーのオープンソースソフトウェアは、Bill Gates氏に代表される反対派が非難するような、資本主義に反する存在ではないという主張を断固として展開した。
「実際の方針は非常に米国的だ。不気味な存在などではなく、アップルパイのように米国そのものの自然なものだ。フリーソフトウェアソリューションは、個人の発明が伝統的にどこに帰着すべきかということに対する1つの回答なのだ。これは発明の自由であり、再発明の自由ではない。ほかの人が発明して確定しているものをふたたび発明するわけではなく、19世紀の爆発的な発明ラッシュの時代と同じような形で、新たに発明することに関する自由なのだ」とMoglen氏は語った。
それでは、あれから1年がたった今、Moglen氏は、フリーのオープンソースソフトウェアの窮状が改善されたと考えているのだろうか?たしかに、後退もあった。いちばん注目されたのは、LinuxディストリビューターのNovellが、Microsoftとの提携を決めたことだ。この提携はオープンソース支持者から激しく非難され、Moglen氏も提携が事実上GPLに違反している可能性があると疑問を投げかけた。
「GPLソフトウェアを配信する権利を得るために誰かにロイヤリティを払わなければならないような契約を結んだ場合、それはGPLのもとに配信しているとは言えないだろう」とMoglen氏は言う。
だが、AppleとEMI GroupがDRM(デジタル権利管理)技術の施されていない楽曲を配信するようになるなど、フリーなオープンソースソフトウェアの発展に向けていくつかの勝利もあった。Moglen氏は特定の例を引き合いに出すことはなかったが、この1年の間に、フリーなオープンソースソフトウェアが生活に大きな影響を及ぼせるし、生活を作りあげることもできる場合も非常に多くなっている事実に、人々はようやく気づき始めたと論じた。
「Time誌は、『Person of the Year(今年の人)はあなただ』と宣言する表紙をかかげたし、次々と増えていくフリーソフトウェアが人々の生活を変えつつある」とMoglen氏は語った。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ