■動画配信分野でのIP Geolocation利用のきっかけとなったオリンピック
動画配信での地域制限は、オリンピックやワールドカップを初めとする世界的なスポーツイベントに端を発しているといえます。2000年シドニーのパラリンピックでは、史上初のネット放映権を米国メディアが取得しました。 一方のシドニーオリンピックは、IOC(国際オリンピック委員会)が、ネット放送は配信地域の管理ができないためテレビ放送の放映権を侵害するとして、ネット放送を全面的に禁止していました。
その後、2002年のソルトレークオリンピックでは、ブロードバンドの普及に伴うネット放送を求める声の高まりと、ユーザーの位置を判別してネット配信の地域を制限できるIP Geolocation技術の精度の向上を視野に入れ、試験的なネット放送が行われました。 そして、この技術によってインターネット上でも配信地域の管理が可能であると判断された2004年のアテネオリンピックでは、多数のサイトからストリーミング配信されました。 2006年のトリノオリンピックでもインターネット放送が行われ、今年夏の北京オリンピックではNBCが2200時間分の映像をライブストリーミングするということです。
また、アメリカでのメジャーリーグの生中継も2002年秋からIP Geolocationによって可能になりました。メジャーリーグのテレビ放送には、数兆円単位の放映権が支払われています。MLB.comでのインターネット放送は、テレビ放送の契約を侵害しないよう、動画配信地域を厳密に管理する必要がありました。 例えば、NYヤンキースの生中継はマンハッタンでオンライン配信してはいけないなど、細かい地域制限があり、IP Geolocationによるユーザーの位置情報なくしては厳密な制限が不可能でした。