シトリックスがサーバ仮想化製品「XenServer」を無償化した理由 - (page 2)

宍戸周夫(テラメディア)

2009-04-28 15:00

――XenAppは今、情報セキュリティやTCO削減という視点で脚光を浴びているのでは?

大古氏: 日本では2005年ごろから、デバイスの中にある個人情報が意図的、または不注意で漏えいすることが話題になり、情報セキュリティが叫ばれるようになりました。そこで、セキュアなサーバでアプリケーションを稼働させたいというニーズが高まり、XenAppが情報セキュリティ分野でも強力なツールになると再認識されました。それまでのリモートアクセス機能だけでなく、情報セキュリティという観点からXenAppが使われるようになったのです。

 同時に、この情報セキュリティと平行して次の課題として浮上してきたのがファットなクライアントを持ち続けるコストです。調達コストは安くなっても維持するコストは高いため、その問題を解決する方法としてXenAppがまた注目されています。アプリケーションをクライアントで持っていなくても、サーバで一括管理すればよく、TCO削減が可能になるからです。

 静岡県の富士市役所はTCO削減を目的にXenAppを導入、数千台のエンドユーザのPCをわずか3人で管理しています。市内の学校や消防署などのPCのアプリケーションがすべてサーバ側にあるので、3人でも管理できるのです。

仮想化市場の拡大が第一

 大古氏が指摘するように、シトリックスは「アプリケーションをいかに使いやすくするか」という視点からスタートしている。そのためにデスクトップの仮想化、サーバの仮想化と領域を拡大してきたが、その基本にあるのは、あらゆるアプリケーションをサービスとして効率的に提供する「Citrix Delivery Center」というインフラストラクチャだ。

――仮想化といってもさまざまなレベルがあり、シトリックスも多様な仮想化製品を出していますね。

大古氏: われわれもXenAppからXenDesktop、XenServerというように製品を拡大してきました。しかし個々の製品でビジネスを考えるのではなく、仮想化という市場全体が伸びることによってわれわれも伸びると確信しています。仮想化へのニーズが拡大することで、より使いやすい環境が整い、より多くのアプリケーションが載ってくる。それによってわれわれのビジネスも一緒に伸びるのです。つまり、XenServerを無償化したからといってビジネス的にマイナスということにはなりません。むしろ、仮想化の市場を拡大するというメリットの方が大きいわけです。

――XenServer無償化は、シトリックスにとってもメリットがあるということですか。

大古氏: XenServer無償化は、あらゆるアプリケーションをサービスとして提供する当社の「Citrix Delivery Center」全体の価値を高めるものだと考えています。それによって、より多くのユーザーがシトリックス製品に投資するようになります。すべてのテクノロジーに課金するのではなく、基盤となる部分は無償で提供することで、シトリックス全体のビジネスが伸びるのです。

――他社との差別化という点では。

大古氏: すでにXenSeverの無償化で顧客を獲得できた例があります。あるアプリケーションを統合しようと考えていた企業が、他社の有料の仮想化ソリューションを検討していたのですが、XenServer無償化で、既存のサーバをパーティションで区切ってXenAppを吸収することを決めました。

 シトリックスは、クライアントからサーバまでをカバーし、クライアントのアプリケーションもすべてサーバ側で管理できます。しかも、センターに集中したことによるネットワークの最適化や負荷の軽減、またデータセンターのエッジから外、クライアント側に寄ったところなど、エンドポイントからサーバまで一貫してソリューションとして提供できるのが強みです。

 いずれにしても、顧客にいかに付加価値を提供できるかが差別化のポイントになります。下のインフラ部分がコモディティ化していくにつれ、ますます上位の付加価値の部分で競争することになりますから、われわれも立ち止まっているわけにはいかないのです。

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