激動のアプリケーション業界、アナリストがSaaSの動向とオラクルのサン買収を分析

藤本京子(編集部)

2009-05-23 03:29

 アプリケーションのSaaS(Software as a Service)化が進み、既存ベンダーがビジネスモデルの変革を迫られる一方で、OracleはハードウェアベンダーのSun Microsystemsを買収し、アプリケーションとハードウェアのアプライアンス化を進めようとしている。このようにさまざまな動きが見られるアプリケーション業界を、アナリストはどう見ているのか。Forrester Research バイスプレジデント 兼 プリンシパルアナリストのRay Wang氏に、アプリケーション業界の動向について聞いた。

SaaSの普及は確実に進む

--SaaSの導入が進んでいるとはいえ、まだほとんどのアプリケーションは自社運用されている。アプリケーションが自社運用されているケースとSaaSで使われているケースの比率は、現状でどの程度なのか。また、その比率は今後どう変化すると考えているか。

Wang氏 Forrester Research バイスプレジデント 兼 プリンシパルアナリスト Ray Wang氏

 確かに現状ではまだほとんどのアプリケーションが自社運用型だが、SaaSへの関心と導入は確実に進んでいる。北米および欧州の企業でアプリケーション導入の決定権を持つ人を対象として実施した調査では、21%がSaaSの利用を拡大しているか、導入または試験導入していると答えている。Forresterでは、2014年までに企業の90%は何らかのSaaSアプリケーションを利用することになるだろうと予測している。

--自社運用型アプリケーションを提供し続けてきた既存ベンダーの中には、SaaSにあまり積極的でない企業も見受けられる。今後そのようなベンダーもビジネスモデルを変更し、よりSaaSに注力するべきなのだろうか。

 もちろん既存ベンダーもSaaSに注力すべきだろう。SaaSが定着することは確実で、導入の選択肢のひとつとなるのはもちろん、顧客により早く製品導入に踏み切ってもらうきっかけともなる。

 ただ、ライセンス料とメンテナンスから来る収益の割合を見ると、多くのベンダーは1対2もしくは1対3でメンテナンスの収益が高くなっている。ライセンス料のディスカウント率が非常に高い上に、メンテナンス料をサブスクリプションモデルのような方式で徴収するベンダーも多いため、サブスクリプション方式でのライセンス販売はすでに実施されているとも言える。

--MicrosoftやOracle、SAPなどの代表的な既存アプリケーションベンダーに何かアドバイスはあるか。

 それぞれの開発プラットフォームをPaaS(Platform as a Service)化すれば、ほかの開発者がそのプラットフォーム上でアプリケーションをより拡張できるのではないかと思う。

--SaaSの普及が進んでいるとはいえ、自社運用型アプリケーションが消滅することはないだろう。特にどのような分野で自社運用型アプリケーションは生き残っていくのか。

 当面の間、ユーザーは両タイプをハイブリッドで利用し続けるだろう。特に自社運用型は、高セキュリティでボリュームが大きく、細やかなカスタマイズが必要な環境において最適な選択肢といえる。

--逆に、完全にSaaSへ移行するアプリケーションはあるだろうか。

 すべてをSaaS化するのはあまりいいアプローチではない。アプリケーションは、自社運用型やホスト型、マルチインスタンスの仮想環境、そしてマルチテナントのSaaSモデルと、さまざまなタイプで提供できるように設計すべきだ。

 とはいえ、一部のアプリケーションはSaaS中心になっていくだろう。それは、非常に分散的な環境において短期導入が必要で、かつハイレベルなコラボレーションが求められる分野だ。OpenAir(2008年6月にNetSuiteが買収)やTenrox、QuickArrow、Clarizenなどの提供するプロジェクトベースソリューションがそのいい例だ。

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