2010年以降注目すべきEnterprise 2.0技術10選(前編)

文:Dion Hinchcliffe 翻訳校正:石橋啓一郎

2010-03-10 07:00

 2010年のエンタープライズコンピューティング界には、Software-as-a-service(SaaS)とソーシャルコンピューティングという、重要で相互に関係の深い2つのトレンドがある。大方の見方では、この双方が急速に成長している一方、ほとんどの大企業では、中核的なビジネス機能や不可欠なアプリケーションではそのどちらも使用されていない。少なくとも現在のところは。

 現実には、より大きな視点から見たソーシャルコンピューティングやクラウドコンピューティングのトレンドは、多くの企業が吸収できるよりも速い進化を続けている。これらの技術には明白な利点があるが、多くの組織がこれらの技術に満足して取り入れる準備ができるまでには、まだ何年もかかるかもしれない。

 だからと言って、組織がこれらの主要なコンピューティングのトレンド(どちらの業界も2桁成長を遂げている)を追いかけ、近い将来重要なビジネス機能で使われるようになるであろう成長技術を理解することが、重要でないというわけではない。実際には、特にEnterprise 2.0においては、事態はまったくの逆だ。

 エンタープライズソーシャルコンピューティング(別名Enterprise 2.0)は、少なくとも中期的には、潜在的にほとんどの組織に対して影響を及ぼす可能性がある。これらの新たなソーシャルビジネスモデル(およびそれと結びつくサービス提供モデルである、SaaS)の影響を受け、変化すると思われるビジネス機能には、コミュニケーションおよび協調作業のための汎用の機能、製品開発、顧客関係管理、マーケティング、事業運営、事業生産性ソリューションなどが含まれる。アドホックな使用や初期導入者においては、すでにこれを何年も利用しているが、この記事でも紹介するとおり、多くのEnterprise 2.0技術は、ようやく現実になり始めているところだ。では、2010年に台頭する、追いかけるべき分野はどういうものだろうか。

ソーシャルテクノロジーの整理

 イノベーションの観点からは、2010年もまた、ソーシャルテクノロジー一般の発展の初期段階として重要な1年になろうとしている。消費者指向ソーシャルウェブの最新の技術と標準について、2010年に何が起こっているかをまとめた私の記事を読んでみて頂ければ、その雰囲気をつかんでもらえるだろう。これらの技術のエンタープライズ的な側面は、大きく遅れていることが多いが、最近得られた教訓を元にした実際の製品やビジネスで利用できる新たなソリューションをつくり出しているという意味では、この業界は急速に前進していると言っていい。

 新しいEnterprise 2.0技術の賢明な導入方法やタイミングを探ろうとしている組織は、ソーシャルコンピューティングが動かす知識経済において、自らの将来がどうなるかを検討する必要が増している。しかしそのためには、新しい技術の位置づけの全体像を把握する必要がある。

Enterprise 2.0技術の全体像

 成功するEnterprise 2.0のプロジェクトは、起きる変化を処理するプロセスと、深く理解した上での技術の適用のバランスが取れている。これは、ソーシャルコンピューティングの背後にある概念と、ソーシャルコンピューティングの経済活動への適用(ソーシャルビジネス)が、Enterprise 2.0を成功させるための究極の鍵だということだ。完全なソリューションは、アイデアを技術と組み合わせた時に生まれるが(技術は手段であって、それ自体は目的ではない)、ソーシャルコンピューティングの世界では、消費者市場であってもエンタープライズ市場であっても、技術自体が可能性の範囲を規定する効果が大きいということも忘れてはならない。

 しかし、ソーシャルコンピューティングやEnterprise 2.0の議論の多くでは、今でも近視眼的な見方が見られる。ソーシャルツールやそのテクノロジーのような、個別の問題に焦点を当てるのは簡単だが、利用の促進やROIの測定といった目に見えにくい問題について考えるのは難しい。幸運なことに、1年前に比べるとその傾向は弱まっており、コミュニティ管理やその他の重要な慣習など、導入や長期的な成功を収めるための「ソフト」の問題も、目立つことの多いソーシャルツールやテクノロジーそのものと同様に扱われるようになってきている。

 それでは、最新の状況を見てみよう。

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