エプソンは6月30日、産業用インクジェットデジタルラベル印刷機「SurePress(シュアプレス) L-4033A」を発表した。10月より、ラベル印刷業者などを対象に販売していく。エプソン販売取締役、販売推進本部長の中野修義氏は「印刷されたものを商品として活用される産業利用領域に本格的に参入していくことになる」と話す。
SurePress L-4033Aには、同社の「マイクロピエゾテクノロジー」を搭載。期間限定商品などを対象にした多品種少量製品向けのラベル印刷、商品ライフサイクルの短期間化などに対応したラベル印刷に適しているという。
従来のアナログ方式のラベル印刷工程では、版の交換や色調整といった印刷準備やメンテナンスに時間を要し、色の安定化のために専門のオペレーターが必要になるなど、5000枚以下の小ロットラベル印刷に柔軟に対応できないという問題があった。
現在、日本国内には約1万台のラベル印刷機があるが、そのうちアナログ機が99%を占め、デジタル機はわずか50台に留まっている。「デジタルならではの特性を生かして、アナログ機で問題となっていた小ロット、短納期の要望に対応していくものになる」(中野氏)としている。
インクには、ブラック、イエロー、マゼンダ、シアンにオレンジ、グリーンを含めた6色による新開発の水性顔料インク「SurePress AQ ink」を採用。印刷時にプラテンヒーターによる一次乾燥を行い、印刷後に乾燥炉で二次乾燥を行うヒートアシスト機構も搭載する。さらに、タッチスクリーンパネルを採用することでシンプルな機構と操作性を実現。メンテナンス性を高めるとともに、360dpiを実現する最新のマイクロピエゾテクノロジーによる高画質印刷にも対応する。印刷技術の専門家を必要とせず、小ロット、短納期、低コストを求めるニーズに応えられるという。
ヘッドは、1個あたり1440ノズルを持つものを15個搭載。2万1600個のマルチノズルを使用することで、高速で、高画質な印刷を可能としている。印刷対象としては、インクジェットコート紙だけでなく、上質紙、キャスト紙、アート紙などの紙メディアのほか、合成紙、PETなどのフィルムへの印刷も可能という。プレコートなしで印刷本紙に印刷できるほか、80〜330mmの幅をサポートし、自動面付け機能により生産効率を高めるといった特徴を持つ。
さらに、従来のアナログ印刷工程と比較した場合のメリットとして、フィルムやプレート、薬品が不要で、印刷する版の変更時に発生する廃インクや損紙を、最小限に抑えることができる点を強調する。水性顔料インクを採用しているため、インク毒性、強い臭気、可燃性への配慮が不要になるといった形で環境性能にも優れているという。
本体の市場想定価格は2500〜3000万円。インク価格は1本あたり2万円台中盤。定期交換部品付き保守料金が年間200万円。販売はエプソン販売からの直販のみで、2012年度までの3年間で国内100台の販売、50億円の事業規模を計画しているほか、全世界では米国を中心に500台の販売を目指す。
「日本におけるラベル印刷事業者は、専業、兼業を合わせて3100社。まずは社内にDTP工程を有しているが、小ロットのジョブの多くを外注しているような大手企業と中堅企業の180社がターゲットとなる。続いて、デジタル印刷機の導入で即日配達、小ロット受注などの新たなビジネスモデルの確立を目指す600社をターゲットに展開していく」(中野氏)
サービスに関しては、専任のサービス担当者を4人配置し、全国翌日での修理を可能とする。また、ショールームを日米欧の3カ所に配置。日本では長野県安曇野市に置き「印刷するものを実際に持ち込んでもらい、具体的な用途を前提に使用してもらう形態でショールームを活用する。明確な顧客ターゲットに対して、開発、生産を行っている事業所の近くで、製品を見ていただくことが最適であると考えた」とする。
セイコーエプソン、情報画像事業本部副事業本部長の三村孝雄氏は、「2007年に試作機を開発して以来、高速印刷、低価格、低ランニングコストといった観点から改良を加えてきた。C&I(コマーシャル&インダストリ)事業は、エプソンの今後の成長において重要な領域。エプソン独自のインクジェットをコア技術として、商業、産業用途に新たなプリンティング価値を提供し、顧客の事業の効率化に貢献していく」とした。