米Hewlett-Packardがストレージベンダーの3PARを買収してから1年が経った。
HPは数年来、企業買収によるストレージ分野の強化を続けており、2008年にiSCSI SANベンダーのLeftHand Networksを、2009年に分散ファイルシステムのIBRIXを買収している。いずれの買収も外部ストレージ製品と関連技術の拡充を目的としているが、対象ユーザーが中堅以上、特に大企業向けという点も共通していた。
2010年12月に開催された会見で、米HP ストレージ部門の幹部は3PARを「クラウドへのニーズに応える」ための製品ラインであると説明。クラウド向けストレージとしての優位性を、「マルチテナント」「効率性」「自律性」の3点から解説していた。
HP P10000 3PAR Storage System
そのHPの日本法人、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)が、ハイエンドストレージ「HP 3PAR Storage System」の最上位モデル「HP P10000 3PAR Storage System」を9月1日から提供している。クラウドを支えるデータセンター向けのハイエンドストレージだ。
HP P10000 3PARの強化点は、(1)ハードウェア性能の向上、(2)運用管理性の改善、(3)仮想化対応の強化の3点だ。
(1)ハードウェア性能の向上という点では、今回新たに第4世代のASICを採用し、コントローラ1台あたりASICを2基搭載できるようになった。その結果、従来モデルの「HP 3PAR T-Class」と比較して、パフォーマンスが1.5倍、帯域幅が2.6倍に向上した。また、最大容量も従来モデル比で倍増させており、「HP P10000 3PAR Storage System V400」は4.84テラバイトから800テラバイトまで、上位モデルの「HP P10000 3PAR Storage System V800」は4.84テラバイトから1.6ペタバイトまで拡張可能だ。
(2)運用管理性の改善では、今回新たに追加されたソフトウェア「HP 3PAR Peer Motion」が大きな役割を担う。Peer Motionは、システム間の境界を越えてデータをやり取りできる機能をもっており、ストレージ同士の垣根を低くする「フェデレーテッドストレージ」の実現を目指すソフトウェア。これにより、旧世代のストレージから最新世代製品へのアップグレードが容易になるほか、複数のストレージの連携、リソースおよびI/Oワークロード配分の変更が可能になる。
宮坂美樹氏
日本HP エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 HPストレージ事業本部 製品マーケティング部 部長の宮坂美樹氏は、「これまでの一般的なストレージは、拡張や設定変更を行う際、ベンダーの有料サービスを受けることが必要だった」と説明。Peer Motionにより、そうしたコストが不要になるとしている。
そのほか、HP 3PARに組み込まれるOSの最新版「InFormOS 3.1.1」の搭載や、ディスク上の使用できない領域を解放する「Thin Persistence機能」の強化がソフトウェア面での特徴だ。
「未使用領域をできるだけ小さくすることができ、解放効率が向上、ディスクを効率的に利用することができる」と、日本HP エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 HPストレージ事業本部 製品マーケティング部の志渡みず絵氏は述べている。
志渡みず絵氏
(3)仮想化対応の強化では、「Autonomic VMware Space Reclamation」がVMDK(Virtual Machine Disk)上で削除された容量を自動的にストレージ側で解放、ディスクをより効率的に再利用することが可能となった。従来は、VMware上の仮想OSあるいはアプリケーションが削除された場合、ストレージ側は削除されたことを自動的に認識することはできなかった。
また、「VMware vSphere 5」との連携機能を備えるほか、「16KB Space Reclamation with Thin Persistence」や「Autonomic VMware Space Reclamation」を組み合わせることで、ストレージの管理を一段と簡素化して管理負担を軽減、管理コストの削減につなげられるとしている。