クラウド型のIDCサービスを提供する新潟のBSNアイネットと富山の北陸コンピュータ・サービスの2社は3月5日、IDCを相互接続し、いずれかのセンターが災害などに見舞われても、他方のセンター上にシステム環境を復旧させ、利用企業が事業を継続できるようにするための災害対策サービスを同日から共同で開始することを明らかにした。新潟は東北電力、富山は北陸電力のエリアであるため、サービス利用企業は災害時の電力供給トラブルでシステム障害を起こすリスクを減らし、事業を継続しやすくなる。
BSNアイネットの廣井智雄マネージャーは「東日本大震災後、顧客企業による災害対策へのニーズが高まる中で、自社のIDC単体で堅牢性を追求するには限界があることに気づいた」と話す。事業継続という顧客の目的を達成する観点に立ち、ライバルともいえる他のIDC事業者と手を組むという異例の取り組みに踏み切った。
BSNアイネットの廣井智雄氏
2社が構築したシステム環境の特徴は、2社が同一のハードウェア/ソフトウェア環境を用意し、仮想環境上で相互の仮想マシンを同期していること。VMware、NetApp、F5など復旧作業を簡素化、自動化する製品を組み合わせることで、煩雑になりがちな災害対策サービス運営の手間を減らした。
現状では、両IDC間の同期は24時間に1回だが、BSNアイネットの坂田源彦シニアチーフは「間隔を短くする予定」とする。災害発生時の復旧プロセスの開始について「自動化するか、利用企業からの連絡を待つかなど、詳細な取り決めは契約によって異なる」(北陸コンピュータ・サービスの情報サービス本部上席マネージャーの細川雅弘氏)
サービスの利用料金は4万円程度からで、データ量などに応じて別途加算される。両社合わせて3年間で3億円の売り上げを見込む。「まだ受注実績はない」(両社)としている。
具体的なシステム構成を見てみると、ネットワークのロードバランサとして、F5ネットワークスの「BIG-IP」シリーズを採用。BIG-IP Global Traffic ManagerのDNSリクエスト処理や、BIG-IP Local Traffice Managerが仮想マシンへの負荷分散機能などがネットワーク上の最適な接続経路を決め、サービス基盤への接続を確保できるようにした。
リカバリの自動化などシステム復旧の過程を担うのが「VMware vCenter Site Recovery Manager 5」だ。仮想データセンターのプロビジョニング、監視、および管理を実行する「vCenter Server」と連動して動作する。また、仮想環境のリソース使用率や構成情報などを一元的に管理する運用管理ツールとして「vCetner Operations Management Suite」を採用している。
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富山・新潟間での仮想マシンイメージの同期では、データ転送前に重複データを排除し、圧縮する機能が特徴という。富士通のストレージシステム「ETERNUS NR1000F」の専用OS「Data ONTAP 8.1」の重複排除およびデータ圧縮機能を利用し、各IDCに設置されているNR1000F間のレプリケーションを「NetApp Snap Mirror」で実施する。