「シマンテックはハードウェアやソフトウェアではなく、人と情報の保護にフォーカスしています」
シマンテック代表取締役社長の河村浩明氏は、6月20日に開催された企業戦略説明会の中で、同社のビジョンは一貫して企業と個人の情報を物理、仮想、クラウドの環境すべてにおいて保護、管理することだと説明した。
2011年度、その実現のために実施したのがディストリビューションチャネルのシェア向上、OEMパートナーへのエンベデッドソリューションの展開、同社が“Big Enterprise”と呼ぶ大企業向けビジネスの強化、そして自社のクラウドサービスおよびクラウドサービスプロバイダーへシマンテックのテクノロジを提供するクラウドサービスの4つの販売戦略だ。
これら4つの施策は概ね順調な成果を上げており、結果的には2011年度から2012年度にかけ日本での売上高は17%成長している。東日本大震災直後に国内でこれだけの成長率を示せていることは、同社の戦略が市場で評価されている証しと言えるだろう。
現状、シマンテックの製品はセキュリティ、バックアップ、ストレージという3つに分類できるが、それらすべての分野においてバランスよく成長しているという。その成果の1つとして、これまで2位に甘んじていた日本でのバックアップ製品市場のシェアでシマンテックがNo.1になったと説明する。
ディストリビューションチャネルの強化策としては、中堅中小企業(SMB)専門の事業部を立ち上げ、従業員数で250人以下の企業規模に特化したマーケティング、営業の活動を行っている。製品パッケージ的にもSMB向けの製品パッケージ化を行い、同セグメントに強い富士通マーケティングやリコー、大塚商会などのパートナーからの販売を強化している。
大企業向けの大型案件も前年度比で3倍に増えているという。この領域でも、営業戦略が順調に推移している様子がうかがえる。さらに、クラウドについても九州電力など大手企業6社による採用もあり、前年度比300%と大きく成長した。
そして、4つの販売戦略の中で最も効果が高かったのがOEMパートナーへのエンベデッドソリューションだ。富士通、NEC、日立製作所という国内大手ベンダー3社と、ファイルサーバやバックアップのソリューションを共同で実施した結果、「OEMのチャネルは30%から40%の成長があった」と河村社長が説明する。
今後の展開として新たに注力するのが、クラウドサービスによるエンドポイントセキュリティとアーカイブのサービス。これまで行ってきたモバイルデバイス管理に加えモバイルアプリケーション管理の領域にも進出する。
9月には「シマンテック・サイバーディフェンスアカデミー」を開校。企業をサイバーセキュリティの脅威から保護するための専門知識を備えた人材の育成にも参入する。これは、政府や企業から要望に応える形で開校するものであり、少人数制で講義だけでなく実習形式での演習にも力を入れるという。アカデミーの卒業後には、何らかの技術認定資格が得られるようにする。
もう1つの新たな取り組みとしては、アプライアンス製品の市場投入だ。「Symantec NetBackupアプライアンス」を提供し、ソフトウェアやクラウドのサービスに加え、増え続けるデータを適切かつ容易に保護、管理するためのソリューションを新たに展開する。アプライアンスについては、シマンテック製だけでなく富士通やNEC、日立などとも協業し製品化ができないか模索していくとしている。
日本での展開はまだ先になるが、クラウド環境を統合的に保護、管理するための「O3(オゾン)」というサービスについても紹介した。O3はクラウド環境にシングルサインオンを含むID管理とアクセスコントロール、暗号化や重要情報の開示を自動ブロックするなどの情報セキュリティ機能、クラウド上のシステムの監査に対応できる情報管理という3つの領域を実現する新たなクラウド向けのセキュリティ管理ソリューションだ。
「オゾン層は雲の上にあって地球を守る存在です」(河村氏)。クラウドのサービスに対しても、それと同じ役割を担うのがシマンテックのO3であり、年内には国内でもサービス展開を開始できればと説明している。