本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、SAPジャパンの安斎富太郎社長と、日本IBMの三瓶雅夫 常務執行役員の発言を紹介する。
「これまでERPが中心だったパートナービジネスで、ERP以外の事業領域をもっと広げていきたい」 (SAPジャパン 安斎富太郎 代表取締役社長)
SAPジャパンが1月下旬、2013年の事業戦略説明会を開いた。安斎氏の冒頭の発言は、その会見で2013年の重点施策の1つとして挙げたパートナーとの協業強化に向けての意気込みを語ったものである。
SAPジャパンの安斎富太郎社長
安斎氏によると、SAPジャパンの2012年度(1~12月)の業績は、売上高が前年度比21%増の7億8900ユーロ(818億1900万円)で、2年連続2けた成長を達成。事業の内訳としては、主力のERPとERP以外の割合がそれぞれ41%、59%となり、ERP以外が半分以上を占めた。
ERP以外の事業とは「アナリティクス」「データベース」「モバイル」「クラウド」を指す。SAPはこれにERPをはじめとした「アプリケーション」を加えた5つの事業を、2011年から重点領域として注力している。会見で説明された事業戦略の詳しい内容については、既に報道されているので関連記事をご覧いただくとして、ここでは同社が「パートナービジネス」と呼ぶパートナーとの協業展開に注目したい。
安斎氏によると、2012年度のパートナービジネスにおける売上高の伸びは前年度比42%増。2年連続で同40%以上の高い伸び率を達成したという。現在、国内で250社を数えるパートナーに対し、共同でのビジネスプランニングやマーケティング、各種トレーニング、グローバル展開の支援などを着実に行ってきたことが、高成長につながっているようだ。
ただし、課題もある。それは、パートナービジネスではERP事業がまだ6割以上を占めていることだ。先に紹介した通り、SAPジャパンの事業の内訳としてはERP以外がほぼ6割を占めているものの、パートナービジネスではERP中心の事業構造の転換が追いついていない格好だ。この現状を打開したいという思いを込めて安斎氏が語ったのが、冒頭の発言である。
パートナービジネスにおけるこうした事業構造の転換には、事業領域の拡大とともに、SAPジャパンにとって長年の懸案だった狙いも込められているといえそうだ。それは、中堅・中小企業向け市場へのさらなる浸透である。