本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、米MicrosoftのKirill Tatarinov エグゼクティブ バイスプレジデントと、日本IBMの望月敬介 インフォメーション・マネジメント事業部長の発言を紹介する。
「マイクロソフトはERP・CRM市場でナンバーワンを目指す」 (米Microsoft Kirill Tatarinov エグゼクティブ バイスプレジデント)
米MicrosoftのKirill Tatarinov エグゼクティブ バイスプレジデント
日本マイクロソフトが先頃、米Microsoftビジネスソリューション事業部門の責任者を務めるKirill Tatarinov(キリル・タタリノフ)エグゼクティブ バイスプレジデントの来日に伴って記者会見を開いた。Tatarinov氏の冒頭の発言は、その会見で、同事業の主力製品であるERP・CRMソリューション「Microsoft Dynamics」の普及拡大に向けた意気込みを示したものである。
Microsoft DynamicsはERP製品の「Dynamics AX」やCRM製品の「Dynamics CRM」からなり、クラウドでもオンプレミスでもユーザーニーズに応じてシームレスな利用環境を提供しているのがユニークな点だ。
Tatarinov氏によると、両製品ともユーザーの視点に立った使いやすさやMicrosoft Office製品との親和性、変更やカスタマイズを容易にした拡張性といった点でユーザーから高い評価を得ており、2013年度(2013年6月期)のグローバルな事業売上高では前年度比12%の伸びを記録。中でもCRMについては、同18%の高い伸びを果たしたという。
会見に同席した日本マイクロソフトの日隈寛和 執行役Dynamicsビジネス本部長によると、とりわけ日本市場では過去6年間連続して2桁成長を記録しているとし、今後もさらにプロモーションの強化などで事業規模を拡大していく構えだ。
Tatarinov氏も日本市場については「大きな成長機会がある」と指摘。その理由として、日本の企業はERPやCRMにおいて独自のシステムを使用しているケースがまだまだ多く、これから新たな要件に対応したソリューションが求められる可能性が高いことを挙げた。
Tatarinov氏はさらに、Microsoft Dynamicsが順調に普及拡大する中で、「最近ではSAPやオラクルの製品を使用していたユーザーが、Microsoft Dynamicsに乗り換えるケースも増えてきている」と明言。その理由を聞いてみると、「大幅なコスト削減を図れるのが決め手になっている。リプレースを行ったある顧客企業から、コストパフォーマンスが4倍上がったという話を聞いた。それくらいのインパクトはあると自負している」と自信にあふれたコメントが返ってきた。
ただ、ERP・CRMといえば、SAPやオラクルなどが激しい市場競争を繰り広げており、マイクロソフトの存在感はまだまだ小さいイメージがある。果たしてマイクロソフトは、この分野でSAPやオラクルと本気で真っ向から戦おうとしているのか。