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ディープウェブの世界

飯田哲夫 (電通国際情報サービス)

2013-11-19 08:00

 ウェブの特徴が匿名性にあるとされたのは遠い過去のことである。今やブログが炎上すれば、個人は容易に特定され、激しい攻撃の対象となる。個人の側もその属性を開示することで、他者とのコミュニケーションを円滑にし、企業からより自分に適したオファーを受けようと歩み寄る。

 スウェーデンのBehavioSecという企業は、オンラインショッピングを行う個人の属性情報としてタイピングの癖を記録して、本人が実際に取引を行っているかを認証する技術を開発した。もはや成りすましを防止するための技術も日進月歩で発展し、匿名性が通用する世界はどんどん狭まっている。

 しかし、当然そこに居心地の悪さを感じる人たちもいる。誰にも気付かれずにウェブを自由に動き回れる透明人間の世界を希求する人たちだ。そして、そうした世界が実際に存在していることが明らかになったのは、犯罪の摘発が契機であっても不思議ではない。

 Time誌によると、通称Dread Pirate Robertsと呼ばれる29歳の男が運営していたSilk Roadというウェブサイトは、匿名での取引が活発に行われるオンラインのブラックマーケットだという。Silk Roadは麻薬の取引などに使われたようだが、“違法ドラッグのAmazon”や“ドラッグのeBay”と呼ばれるほどに、eコマースのビジネステクニックを積極的に取り入れている。

 例えば、バイヤーとセラーがお互いをレーティングできる仕組みだ。これなど、匿名性の高いブラックマーケットでは最も有効に機能するだろう。しかし、通常のeコマースと決定的に異なる点が二つある。

 一つは、利用者はTor(トーア)と呼ばれる通信ソフトを利用すること。もう一つは、決済にBitcoinを使うことである。Torは、通信経路を秘匿化することで、取引当事者の特定を困難にする。そして、分散型のデジタルカレンシーであるBitcoinは、決済から個人が特定されることを防止する。

 Torとは、もともとは米国海軍研究所で開発され、2003年にはオープンソースプロジェクトとして公開されている。Torは「The Onion Router」の略称で、タマネギのように何重にも暗号化されていることを表しているのだという。

 Time誌によれば、米国政府がその原型を作り、そして今でも支援しているのは、犯罪の摘発や諜報活動を円滑に行うためであるという。しかし、ここ最近、米国の諜報活動の実態が暴かれ、国際社会での非難を浴びる中で、ディープウェブを捕捉しようという技術の開発もやりにくくなるだろう。

 Time誌の記者は、あまりにも今のウェブにはプライバシーがなさ過ぎると言う。また、一方で、ディープウェブは匿名性が高すぎると指摘する。この居心地の悪い状態がいつまでも続くことはないだろう。

 しかし、現在、一般人であるわれわれのリアルライフの行動は監視カメラで追いかけられ、ウェブでの振る舞いは容易に捕捉されうる。これは逃れようのない現実である。

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飯田哲夫(Tetsuo Iida)

電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。

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