IDC Japanは6月26日、国内企業の通信サービス利用に関する調査結果を発表した。固定音声通信サービスでは、回線交換式サービスがIP系音声サービスの利用率を上回る一方、企業の内線サービスでは、自営型のIPを使った宅内交換機(IP-PBX)が従来型のアナログPBXの利用率を上回る結果が出た。内線サービスのIP化が進む背景として、大手企業の移行がけん引していると分析している。
WANサービスのうち統合型ネットワークサービスでは、ユーザーが事業者選定で最重視するのは「ネットワーク利用の総費用での優位性」だった。各事業者はクラウドやセキュリティなどとのセット価格で回線を割安に提供しており、価格競争が激化するとした。
モバイル通信サービス分野でスマートフォンでの顧客1人あたりの平均売り上げ(Average Revenue Per User:ARPU)は全般的にフィーチャーフォンより高額な傾向にあるが、スマートフォン1台あたりの月額料が2000円未満という回答も一部あり、キャリアから回線を借り受けて格安にサービスを提供する仮想移動体通信事業者(MVNO)の影響が強まっていると想定している。MVNOとキャリアの接続料が下落している昨今、スマートフォンのARPUは今後も継続して下落し、スマートフォンの企業への浸透率は高まるとみる。
固定ブロードバンドサービスについては、光ファイバ(FTTH)をネット接続目的で利用する企業のうち、過去5年間に事業者を変更した理由を聞いたところ「価格」や「モバイルとの親和性」「クラウドとの親和性」などが挙がった。これはKDDIの「スマートバリュー for Business」など通信サービスと付帯サービスをバンドルして割り引いて提供するFMC(Fixed and Mobile Convergence)が影響していると分析する。
IDCは、音声通信サービスはモバイルとIPに加え、クラウドが競争軸になり、統合型ネットワークサービスのターゲットは中堅中小(SMB)企業向けへシフトする。またブロードバンドサービスはWi-Fi普及を機にFMC競争がさらに加速すると説明した。その上で「音声のIP化/クラウド化競争は品質制御と総所有コスト(TCO)の削減率明確化が焦点になり、法人WANサービス市場ではSMBへの営業力強化が重要。固定ブロードバンドの付加価値向上と利益率合理化が重要になる」とコメントしている。
統合型ネットワークサービスの将来的な導入意向 N=443(単一回答、今現在統合型ネットワークサービスを利用していない企業に質問)