前回の記事 では、IoT(モノのインターネット)という言葉の定義の拡散について考えた。今回は、そもそも、「モノのインターネット」における「モノ」とは何なのか、という視点からIoTの定義について再び考えてみたい。
多種多様な「モノ」
「モノ」という概念に対応する概念は従来からある「コンピューター機器」、つまり、パーソナルコンピューター、スマートフォン、タブレットなどだ。これらのコンピューター機器ではない(正確に言うとコンピューター機器とはとらえられていなかった)日常生活に存在する「モノ」、たとえば、家電製品、自動車、傘、メガネ、靴、荷物、書類、食料品、日用雑貨等々をネットワークと接続できるようにすることがIoTの本質だ。
ここで、上記に上げた「モノ」の例を見ただけでも、これらを十把一絡げで扱うことができないことがわかるだろう。これらの「モノ」の特性は多様だ。たとえば、家電製品や自動車であれば電源は安定供給されている。
また、元々の製品のコストが高いため、高性能なコンピューターを内蔵することによる追加コストを許容しやすい。外界との通信プロトコルはIPv6ベースであることが望ましいだろう。結果的に、これらの「モノ」は従来型のコンピューターにきわめて近いものとなる。
これとは対照的に、食料品や日用雑貨、たとえば、チューインガムにコンピューターを内蔵することは考えにくい。電源供給などの点で技術的にも困難であるし、コストに見合うメリットが得られるとは思えない。この場合には、無線タグが有効なソリューションになり得るだろう。
ただし、この場合でもチューインガムのそれぞれに無線タグを付して、といったような2000年頃の無線タグブーム期に宣伝されていたようなソリューションが有効とは思えない。ほとんどのコストがかからない従来型ソリューションであるバーコードと比較したコスト増分を上回る価値が提供できるとは思えないからだ。
たとえば、ボックスやカートン単位であれば、無線タグによる在庫管理上のメリットが魅力的ソリューションになる余地はある。