IDC Japanは4月1日、国内クラウドサービスプロバイダー(CSP)のサーバ採用動向調査結果を発表した。 CSPをはじめとするユーザー企業ごとにカスタマイズしたサーバを開発、製造する メーカー(Original Design Manufacturer:ODM)を直接ユーザー企業に出荷する “ODMダイレクト”市場の可能性を探った。
従来ODMは、大手ベンダーからの製造委託を受けてきたため、大手ベンダーを経由せずに直接ユーザー企業へ出荷することはなかったが、海外大手のCSPはクラウド用のサーバとしてODMダイレクトの採用を積極的に進めている。海外大手のCSPはODMダイレクトを採用し、従来ODMが出荷していた大手ベンダーを“中抜き”でき、調達価格を低減できる利点がある。
国内CSPは、海外大手のCSPほどの規模はないが、今後のサーバ増設が見込める需要家として大きな存在になっているとした。国内CSPも“中抜き”による調達価格の低減を期待し、ODMダイレクトの採用を検討しているという。国内CSPは運用コストの削減も狙っているため、ODMが個別の運用環境に最適化した設計のサーバを供給できる点も評価しているとした。
ODMダイレクトの価格は、仕様が同じサーバであれば、累計購入台数の増加に伴い、設計などの初期コストを回収できるため、初回購入時よりも低く抑えられるという。従来のサーバ製品の価格は、継続的にサーバを購入しても累計購入台数に応じて下がることはない。CSPは一般ユーザー企業とは異なり規模の経済を追求するため、ODMの採用する価格設定方式の方がCSPに適していると説明している。
一方でODMは設計と製造に特化してきたため、従来サーバベンダーがサーバ供給で果たしてきた役割のすべてを担っているわけではないとも指摘している。ODMダイレクトの採用によってCSPは、このODMが担っていない役割を自ら補わなければならない。具体的には英語による納期把握や輸入管理、為替リスク管理に加え、検証や構築、保守を主体的に進める必要がある。この手間の負担が大きいと判断して、ODMダイレクトの採用を中断したCSPもあるという。
しかし、ODMダイレクトは今後、「Open Compute Project(OCP)」の認知拡大、すべてのインフラをソフトウェアで定義する“Software-Defined Infrastructure(SDI)”の実現によって、CSPを中心に普及が進む可能性があると説明している。
IDCは、OCPによる、海外大手CSPの要求が反映されたサーバ仕様には潜在的な需要があり、SDIを実現することでサーバ単体の障害がクラウドサービス全体の可用性に影響を与えなくなると指摘。ODMダイレクトは、SDIによりインフラ全体の可用性が維持できる環境が整うことによって、さらに普及する可能性はあると説明している。
サーバ供給時の既存ベンダーとODMの関係(IDC提供)