日本マイクロソフトは9月2~4日の3日間、今年度から開始した新イベント「FEST2015」を都内で開催している。
FESTは、昨年度まで別々に行っていた技術者向けイベント「The Microsoft Conference」、パートナー企業向けイベント「マイクロソフト ジャパン パートナー コンファレンス」、ビジネスリーダー向けイベント「Microsoft Dynamics Forum」を統合したもの。1日目を「パートナーデイ」、2日目を「ビジネスデイ」、3日目を「テクノロジデイ」として、それぞれパートナー企業、ビジネスの意思決定層、IT管理者を対象に、製品やテクノロジの最新動向、活用事例に関する情報を提供する。
日本マイクロソフト 代表執行役 社長の平野拓也氏
初日のパートナーデイのキーノートでは、同社 代表執行役 社長の平野拓也氏が「パートナー様とともに推進する“変革”」と題してプレゼンテーションし、クラウドパートナー向けのプログラム拡充に言及した。また、7月に会長に退いた樋口泰行氏の挨拶、同社 業務執行役員 エバンジェリストの西脇資哲氏による「Windows 10」や「Surface Hub」、「Cortana」などのデモが行われた。
初日キーノート終了後には、同社 執行役常務の高橋明宏氏がクラウドパートナー戦略に関して報道関係者の質問に応じた。ここでは、平野氏のキーノートと、高橋氏の質疑応答から、同社のパートナー戦略に関する内容をレポートする。
クラウドパートナーのマージン率は再販パートナーの3.5倍
平野氏は、2016年度のパートナー戦略として「エンドユーザーのビジネスのクラウドシフトをともに支援するクラウドパートナーのエコシステム拡大」を挙げた。「2015年度には新規に1000社のクラウドパートナーを獲得した。2016年度も1000社増やしたい」(平野氏)
キーノートに登壇した代表執行役 会長の樋口泰行氏は「会長として日本の課題を解決する事業に取り組んでいく」と述べた
クラウドパートナーのエコシステム拡大のための具体策として、パートナーが独自開発したアプリケーションやサービスを、Microsoftのクラウドサービスと組み合わせてエンドユーザーに提供するためのパートナープログラム「クラウドソリューションパートナー(CSP)」を拡充、変更させる。
従来、CSPの対象となるクラウドサービスは「Office 365」「Enterprise Mobility Suite」だけだったが、ここに「Microsoft Dynamics CRM」「Microsoft Azure」を追加した。また、「エンドユーザーがどの程度クラウドを使ったのか利用状況がわかるポータルサイト」(平野氏)を8月1日からCSP向けに提供している。
特に、独立系ソフトウェアベンダー(ISV)のCSPへの取り込みを強化。ISVがAzureを基盤として自社開発ソフトをクラウドサービス化するプロセスを支援するための専任組織を新設したほか、ISV専用の相談窓口、Azureベースのビジネスの立ち上げを集中的にサポートする「Azureメンタープログラム」などを用意する。
キーノートで「Surface Hub」のデモを行う日本マイクロソフト 業務執行役員 エバンジェリストの西脇資哲氏(左)。Surface Hubは近日中に国内発表される予定だ
パートナー企業が自社のビジネスをクラウドシフトすることの意義について、平野氏は、IDCのグローバルでの調査結果などを引用して説明した。調査によれば、クラウド売り上げが50%の以上の同社パートナー企業と50%未満の同社パートナー企業を比較したとき、前者は後者より新規顧客の獲得が1.3倍、売上増加率が1.4倍、利益増加率が1.5倍だった。
また、同社パートナー企業のビジネス別にマージン率をみると、再販ビジネスは20%、SIビジネスは35%、マネージドサービス(運用や導入支援)は45%、CSPなどでアプリケーションを提供するビジネスでは65%だ。「リセラーパートナーやSIパートナーが、自社のビジネスをクラウドシフトすることで、高い収益を確保できるようになる。当社はその変革を支援する」(平野氏)
MSはクラウドでGoogleやAWSの真逆を行く
「Microsoftはパートナーとエコシステムを作ってクラウドビジネスを拡大していく。これは、ダイレクトビジネスに向かうGoogleやAWS(Amazon Web Services)などの競合他社とは真逆の戦略だ」――。キーノート終了後に取材に応じた高橋氏は、同社のクラウドパートナー戦略をこのように説明した。「当社1社ですべてのエンドユーザーをサポートするのは限界。最初からエコシステムをつくってクラウドの時代を乗り越えていく」(高橋氏)
日本マイクロソフト 執行役常務 高橋明宏氏
クラウドのエコシステムの中心となるのは、平野氏も紹介していたCSPだ。「CSPはクラウド時代の新しいOEMライセンスの形態。エンドユーザーがクラウドを使えば使うほどパートナーにインセンティブが支払われる仕組みだ。自社にソリューションがあって、月額課金の仕組みを持つ企業であれば誰でも参加できるプログラム」と高橋氏。2014年7月にCSPを開始して以来、これまでGoogleやAWSのパートナー企業のMicrosoftクラウドパートナーへの乗り換えが起こっているという。
既存のリセラーパートナー、SIパートナーのクラウドシフトの支援策については、「新規のクラウドパートナーは顧客獲得が課題だ。一方、既存のリセラーやSIパートナーは顧客がついているがクラウドシフトが課題。エコシステムの中でこの2者を結びつけることで、ウィンウィンに持って行く」(高橋氏)と回答した。