海外コメンタリー

大規模アジャイル開発を支援する「SAFe」--導入前に問うべき3つのこと

John Weathington (Special to TechRepublic) 翻訳校正: 川村インターナショナル

2015-09-14 06:30

 スクラムやその他のアジャイルソフトウェア開発手法を少しでも経験したことのある人なら、スケーラビリティの問題に直面したことがあるはずだ。スクラムは少人数のチームが1つのプロジェクトに取り組んでいる場合はうまく機能するが、大規模な取り組みを促進する手法として意図されたものでは決してない。ましてや、全社的な取り組みなど想定していない。

 そこで、「大規模アジャイル開発フレームワーク」(SAFe)の登場だ。SAFeは効果的に設計され、よく考えて作り込まれた開発フレームワークで、複数のスクラムを調整および整理してプログラムを作成し、それをさらに拡大してポートフォリオにするためのものだ。そのポートフォリオは、おそらく大規模な組織全体を動かすこともできると考えられている。

 リーダーは変化しやすい競争環境への対応を余儀なくされているため、企業レベルでアジャイルな枠組みを受け入れるという展望は多くのリーダーにとって魅力的なものだ。しかし、組織にSAFeを導入する準備ができていない場合、それを展開することによって、不愉快なほどの抵抗や混乱が発生する可能性もある。本記事では、SAFeの採用を決める前に自問すべき3つの質問を紹介する。

1. 本当にアジャイルな組織を目指しているのか

 アジャイルな組織を求める理由は何だろうか。ほとんどのリーダーはこの問題について熟考しない。

 ニンブル(機敏)な組織とアジャイルな組織には差がある。ニンブルな組織は、作用の及ぶ範囲をいわば従属変数のようにするか、あるいはバランスを取り、変動する外的制約に対応するよう自らを組織化する。そのように範囲を固定せず、組織は自らの構造に大きな混乱を与えることなく直ちに方向転換することができる。組織をニンブルにする戦略はたくさんあるが、ほぼすべてのケースで、組織は固定されたタイムボックスでイテレーションの概念を受け入れる。アジャイルな組織を構築することは、組織をニンブルにする手段の1つである。

 アジャイルな組織とは、ニンブルな組織に自己組織化の要素を加えたものである。自己組織化は、組織内の個々の貢献者に自分の天性の能力に基づいてグループの意思を決定する権限を与えることによって、複雑な適応システムを作り上げるリーダーシップスタイルだ。これは非常に高度なリーダーシップスタイルなので、最適な選択肢でないこともあれば、リーダーが予期した結果を得られないこともある。多くのリーダーは、自分の企業をアジャイル志向にしたいという熱意を持ち、アジャイル哲学のこの肝要な側面を忘れる。したがって、彼らは多くの貢献者に管理権限を譲ることに対する不安に駆られて、初期のアジャイル企業の繊細なエコシステムをいつも決まって傷つけてしまう。

 アジャイル哲学を受け入れる覚悟ができていないのなら、ニンブルの代替手段を追求して、SAFeなどのアジャイルベースの開発フレームワークには近づかない方がいい。

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提供:Scaled Agile, Inc.

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