北川裕康「データアナリティクスの勘所」

システム開発やマーケティングをまだ外注しますか

北川裕康 2015年10月15日 07時30分

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 今回は、外注や業務委託について考えてみましょう。

 最近は状況が随分変わってきたと聞きますが、ITやマーケティングなど、ビジネスに直結するようなコアな仕事を、日本企業はまだまだ外部の会社に発注しているのではないでしょうか。「マーケティングがコアな業務?」と思われるかもしれませんが、私は最前線のコアの業務だと思って仕事をしています。ここでは、特に(1)アプリケーション開発、(2)マーケティング、(3)データ分析――を外注や委託業務することについてそれぞれ考えを述べます。

 ちなみに、私は元ITエンジニアです。大学では富士通のメインフレーム「Mシリーズ」を使って、SQL文をCOBOLとアセンブラを使って作成していました。卒業後に富士通に入社し、UNIXを使ったCADシステムをC言語で開発しました。外部のITベンダーにも開発仕事を出していましたが、結構、自分でもプログラミングしました。ですから、開発者の仕事や、外部ベンダーへの発注なども経験して分かっているつもりです。

社内Developer不在の弊害

 アプリケーション開発の「Developer」という仕事の本来の位置づけをご存知でしょうか。

 日本マイクロソフトでデベロッパーエバンジェリズムの仕事をしているときに、DeveloperとIT Professionalが、職種の名称だと知りました。日本と一部の国を除く大多数の国では、一般企業のIT部門にDeveloperとIT Professionalの担当者がいて、アプリケーションを開発したり、開発したアプリケーションを導入、管理したりするのです。しかも、そこにはキャリアパスがあります。自分の会社へITで直接貢献する仕事との意識があり、仕事への満足度も非常に高い職種です。

 それと比べて、日本ではどれだけの一般企業にDeveloperがいるのでしょうか。残念ながら、発注のプロセスのかなり末端にDeveloperが位置づけられていると思います。ある意味、製造の現場が、ITでは遠いところにいってしまっているのです。

 では、それの何が問題かというと、以下のようなことです。

  • 業務に精通していない可能性の高い外部のベンダーがアプリケーションを開発する。これでは、顕在化されたニーズに対応は可能だが、潜在的なニーズに対応できない。
  • アプリケーション開発の経験のない人が開発プロジェクトを指揮する。自動車など製造業の生産現場で、そんなことがありえるのでしょうか。有名なデベロッパーが「いつまでもコードを書く理由は、ものごとの本質を理解することができるからだ」と言っていた事を思い出します。
  • エンドユーザーの反応を見ながら徐々に機能を実装していくアジァイル型の開発に適さない。では、ウォータフォール型でやるかというと、完成したときにエンドユーザーのニーズに合わないシステムが出来てしまうリスクが高くなります。
  • リスクを負いにくい外部のベンダーに依存するので、最新ITのテクノロジを活用して他社を出し抜くということが難しい。

 これだけ優秀なパッケージソフトウェアやクラウドが数多くある中、すべてを内製しようとは思いません。しかし、全体のアーキテクチャを設計して、買うところ、業務委託するところ、自社で作るところのメリハリをつけることが大切ではないでしょうか。

 ただ、日本企業のIT部門がアプリケーションを内製できるようになるかというと、そんな簡単なことではないと思います。人は急には育ちませんし、そのような環境や企業文化を作り出すことも簡単ではありません。それでも最近では内製化にチャレンジする企業が増えてきました。今後もっとそのような企業が増えてほしいと願うばかりです。

広告代理店は企業戦略にまで踏み込めるか?

 次に、今の私の本職であるマーケティングを見てみましょう。


 私はグローバル企業に長い年月勤めていますが、B to Bの会社ですらマーケティング部門は努力して顧客のデータを収集し、そのデータを分析してキャンペーンを行い、営業に案件を渡す努力をします。結果に向かって、大阪弁でいう“必死のパッチ”です。

 もちろん、ブランドや製品の認知、顧客満足度アップも大事な仕事です。私の率いるSAS Institute Japanのマーケティング部門もキャンペーンの実施を、特にチャネルに精通した外部の広告代理店に発注します。ただ、重要なマーケティング戦略やキャンペーンプランは、企業戦略や営業戦略をみながら自社中心で描きます。そして、実施にはITをフル活用します。

 前職のCisco Systemsで米国本社に出張したときのことです。マーケティンググループのいるオフィスに、IT部門のマーケティング担当グループが「Marketing IT」として同じフロアに隣同士で座って仕事をしているではないですか。Marketing ITは、マーケティングのために、アプリケーションを買ったり作ったりしていました。そのことで、ITを基盤にマーケティングを実行しているということを強く実感しました。マーケティングは、営業と同じく顧客最前線の仕事であり、ITを使って攻める部門なのです。

 さて、日本企業のマーケティングはというとどうでしょうか。私の会社のお客様にはITで攻めているマーケティング部門がたくさんありますが、総じて、広報宣伝や販売促進グループという営業サポートの仕事をしている傾向があります。さらに、かなりの部分を外注に頼っていると想像します。

 せっかく導入したマーケティングオートメーションが、武器にならずに単なるキャンペーンメール配信システムになってはいないでしょうか。日本では、広告代理店が顧客のマーケティング部門に対してマーケティングオートメーションの提案やコンサルティングをしている、ユニークな現象があるように思えます。これもある意味、企業のマーケティング部門が広告代理店に依存している証拠かもしれません。

 本当にマーケティングオートメーションを活用している企業は、戦略的に自社の業務プロセスにそれを組み込んでいます。広告代理店が、企業戦略や業務に踏み込めるのであれば問題ありませんが、そうとは思えません。私は、フロントオフィスの重要な機能として、企業内のマーケティング部門が、売上に貢献するためのマーケティングのあるべき姿を描く必要があると強く思います。その中で、どこを外注するかが大事です。

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