北川裕康「データアナリティクスの勘所」

エンジニアとして開発者の役に立つ仕事がしたい--対談:Increments及川氏とSAS北川氏 (後編)

吉田 洋平 羽野三千世 (編集部) 2016年02月24日 07時00分

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 SAS Institute Japanの執行役員である北川裕康氏とIncrementsのプロダクトマネージャである及川卓也氏。2人には日本DECとマイクロソフトに同時期に在籍した過去があり、共に長期に渡ってIT業界に関わってきた。前編に続き、両氏の対談の後編をお送りする。(文中敬称略)


北川裕康氏(左)と及川卓也氏(右)

北川:これまでのキャリアについて聞かせてください。最初の日本DECはなぜ選択したのですか。

及川:大学の研究室の先輩に勧められて入社したのですが、良い選択をしたなと思っていますよ。とがった人が多くて好き勝手やらせてもらえた(笑)。若いうちからお客さんのニーズを聞いて製品を開発するという経験ができました。

北川:マイクロソフトには1997年に入ったんですよね。僕も同時期にマイクロソフトにいたんです。SQL Serverも魅力的だったのですが、元DECのデヴィッド・カトラーによるWindows NTの開発についての話を、G・パスカル・ザカリーの「闘うプログラマー」を読んでマイクロソフトに入ろうと思いました。

及川:僕も「闘うプログラマー」には影響を受けました。マイクロソフトには誘われて入ったんですが、決断するきっかけとなったのはマイクロソフトのカンファレンス「TechEd」に行って分散処理のセッションを見たことですね。当時DECの分散処理技術は世界の最先端を行っていたんですが、実際には全然使われていなかったんです。でもWinodows NTでは分散処理が重要な役割を担っていました。一緒に見ていたDECの先輩と「自分達のやりたいことはこれなんじゃないか」と興奮して盛り上がったのを覚えています。

北川:マイクロソフトの次はグーグルに移られますね。そのきっかけはなんだったのでしょうか。

及川:当時、梅田望夫さんの「ウェブ進化論」を読んで影響を受けて、グーグルとかはてなとか、ウェブ系の会社が気になって仕方なくなっていたんです。それで、グーグルを受けたら運良く入ることができました。

グローバルコミュニケーションで苦労した


北川:順風満帆にみえる及川さんのキャリアで、特に苦労したことってありますか。

及川:実際は色々と苦労しました。特に、英語がネイティブではないので、リーダーの立場になると苦労しましたね。これは英語力の問題というより、グローバルコミュニケーション能力なんです。いろんなところにガンガン入っていく力が足りませんでした。グーグルのときは英語を使ったグローバルコミュニケーションが最後まで課題だったと思います。

北川:エンジニアとして苦労したり、気をつけてきたことはありますか。

及川:特定の技術にしばられないようにしようと、いつも考えています。ヘッドハンターの人に定期的に会うようにしていて、「いまの技術力だったら一般的には年収はこのくらい」という情報を調べてもらうようにしています。「この技術は出来る人が多くて価値が下がるな」と感じたら、自分で仕事を作るようにするんです。そうすると新しいスキルが身に付くし、新しい人脈も広がる。

 北川さんはどうですか。北川さんのキャリアについてもうかがいたいです。

北川:富士通から日本DECに移ったのはエンジニアを追求したいと思ったからですね。「これからはネットワーク中心の世の中になる」と思って転職先を選びました。日本DECではプリセールスをやりました。プリセールスでは、データベースをサポートする商談になるとオラクルに負けてしまうことが多かったんです。そういう中で「もっと大きな戦いをしたい」と考えてマイクロソフトに移ったという経緯です。

 今のSASに入ったこともキャリアの上で大きいですね。初めて経営に近い仕事をさせてもらっています。とてもやりがいがあります。自分はハードではなく、ソフトウエアのレイヤーの高いところで価値を発揮したいと思っているので、そういう点でもSASは合っていますね。

及川:SASのやっているようなアナリティクスの分野は今、完全に追い風が吹いていますよね。

北川:そうですね、かなり一般的になってきました。ただ、日本の問題は相対的にアナリティクスの成熟度が低いことです。大学に統計学部が1つしかないのは日本くらいです。ITエンジニアと同じように、社会での活躍の場が限定されてきたのが原因かと思います。ビッグデータとかIoTとかで少しずつ変わってきていますが。

及川:リテラシーのベースから必要ですよね。ITリテラシーと同じように統計リテラシーが必要だと思います。例えば、グラフって数字が入っているから嘘がつけないように思えるかもしれないけど、縮尺変えれば嘘がつけてしまう。

 機械学習とかAI、ビッグデータなんかは、数字とか統計のリテラシーがないと騙されてしまいます。SIerは高く買ってもらったほうがいいからいろんなシステムを売ろうとするけど、エクセルでもできる分析はとても多いです。

開発者の役に立つ仕事がしたい


北川:及川さんは経営への興味はありますか。

及川:ベンチャーキャピタルの人に会って起業を考えたりしたことはあります。ただ、自分は開発者の人に対して役に立ちたいという思いが一貫してあるので、自分で経営することにこだわることはないなと感じています。Chromeもエンジニアの人が使える要素技術だと思って開発していましたし。だからIncrementsの社長の海野弘成さんと話して「Qiita」の話で盛り上がったときに、Incrementsに入りたいと思いました。

 Qiitaはプログラマーや開発者のための情報共有サービスです。われわれのサービスに登録しているのは圧倒的にウェブ技術者、スマートフォンの技術者が多い。でも世の中には、その他にも多くの技術者、例えばマイクロソフト系の技術者が沢山いるので、そういう人にも使ってもらいたいと思っています。

北川:お話を聞けば非常に納得できるのですが、最初に及川さんがスタートアップに入ったと知ったときは意外でした。

及川:大企業で多くのユーザーをすでに抱えるサービスや製品の開発に携わるのも魅力的ですが、それよりもQiitaという開発者のためのプラットフォームをさらに良くすることで、間接的により多くの人に貢献できる方が私には合っていました。例えば個人ブログだと開発者に有益なことを書いても見てもらえないことがありますが、Qiitaであればとても沢山の人に見てもらえます。それにより開発者としてより多くの気付きも得られ、成長の機会も増すでしょう。さらに、その結果として世の中も良くなっていく。そのような形で社会を良くしたいと考えている会社に合流したくなったんですね。

 北川さんは今後のキャリアをどう考えていますか。富士通の後はずっと外資系企業ですよね。個人的には日本企業に入って業界を変えていってもらえたらと思ったりします。マーケティングの力を使えば日本企業を変えることができるんじゃないかと。

北川:私は、及川さんがエンジニアにこだわるようにマーケティングにこだわりたいと思っています。日本ではまだまだマーケティングを近代化し、企業に貢献する余地があります。実践しながら、外から必要な情報を発信したりして、応援していけたらと思っています。

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