データ販売ビジネスの拡大を急ぐTwitter、IBMやNTTデータがツイート分析

羽野三千世 (編集部)

2016-01-08 18:35

 世界で3億2000万人が利用し、1日5億件のツイートが投稿されている大規模プラットフォーム「Twitter」。Twitter社はこれまで広告ビジネスを核に成長してきたが、今、新たな収益源としてデータ販売ビジネスの拡大を急いでいる。

 従来同社は、Twitterデータをビジネス利用したい企業向けに、再販パートナーを通じて投稿文とそれに関連するメタデータを提供していた。2015年夏に、このデータ販売モデルを変更。すべての再販パートナーとの契約を解除し、2014年に買収した米Gnip社を通じて、企業に直接データを販売するようになった。

 再販パートナーとの関係を断ち切った一方で、Twitterデータを分析して洞察を加えたデータを法人販売するアナリティクスパートナー(データパートナー)との連携を強化している。

 認定したデータパートナーに対しては、公開されている全ての投稿文と、それに関連する65要素のメタデータ(位置情報、ユーザー情報、添付画像のリンクなど)を提供。生データの再販は許可しないが、パートナー側のプラットフォームで分析をしたデータについては、サービスやデータの形で企業に提供することを許可している。同社が認定したデータパートナーは世界に数百社、そのうち国内の企業向けにビジネスを展開しているパートナーは27社(2015年12月末時点)を数える。

Watsonの洞察結果を条件にツイートを検索

 IBMは、Twitter社から提供を受けたTwitterの投稿文と関連するメタデータを、データアナリティクスサービス「Watson Analytics」や、ソーシャルアナリティクス製品「Social Media Analytics」と統合し、ビジネスユーザーやアナリスト向けのサービスを開発している。


「IBM Insights for Twitter」

 一例では、TwitterデータにWatsonによる分析処理を加えたものをデータベース化し、そのデータベースを活用した検索APIをクラウドプラットフォーム「IBM Bluemix」上に「IBM Insights for Twitter」のサービス名称で公開している。

 IBM Insights for Twitterでは、全ツイートに対して、投稿内容に含まれる「感情」や、投稿文から推測できる投稿者の属性情報といったWatsonによる洞察が付加されている。この洞察を検索条件にして、例えば、「IBMについてネガティブなことをつぶやいている親(検索キーワード:「IBM」「sentiment:negative」「has:children」)」といったようなツイートを探すことが可能だ。

Twitterのセンチメントと日銀短観に相関

 NTTデータは、Twitterデータの国内の再販パートナーの代表格だった。2012年にTwitterと契約を締結し、日本語の生ツイートデータの再販と、独自開発の自然言語エンジン「なずき」を搭載したTwitterデータ提供プラットフォーム「なずきのおと」を提供してきた。「なずきのおと」では、投稿文の中にあるトピックの抽出や、ポジティブ・ネガティブの判定が可能だ。

 2015年8月以降は、アナリティクスパートナーとして、Twitterデータの「投稿者プロファイリング」や「指標化」を行い、その分析結果を活用した新しいサービスの開発に注力している。

 Twitter投稿者をプロファイリングしたデータは、広告・マーケティングに有用だ。同社が、Twitter IDとECサイトのIDを連携させて、Twitterデータ分析によるカスタマープロファイリングと購買履歴を組み合わせてテストマーケティングを実施したところ、商品のクリック率が2倍、購買率が1.5倍になったとする。今後は、Twitterデータから投稿者のライフイベントを検出してEBM(イベントベースドマーケティング)などにつなげるための研究を進めていくという。

 Twitterデータを指標化して活用する取り組みの一例では、“株価は世の中のムードで動く”という仮定に基づき、Twitterデータのセンチメントを「金融センチメント指標」に位置付けて株式指標との関連を研究している。現在のところ、Twitterのセンチメントは、日経VIと週次で相関があることが確認されている。また、相関係数0.8以上の強さで、日銀短観とも相関があるという。


Twitterのセンチメントと株式指標の相関を研究

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