筆者は最近、Dellのソフトウェアの情報管理関連グループで最高研究責任者(CRO)を務め、Dell Statisticaなどを担当するShawn Rogers氏と話をした。Rogers氏は、2016年には企業がモノのインターネット(IoT)のリアルタイムアプリケーションに積極的に取り組むのに加え、IoTビッグデータに関する取り組みが増えると予想している。同氏は、ビッグデータやアナリティクスのためのアプリケーションは、中央集権的な単一のデータレポジトリではなく、組織の末端に移り、企業全体にビッグデータのプールが分散する形になると述べている。
「2016年はシチズンデータサイエンティストの年になるかもしれないと私は考えている。これは、企業のあらゆるユーザーが、ビッグデータとアナリティクスについて、より民主的なアプローチを求めているからだ」とRogers氏は言う。「すべての企業にデータサイエンティストを雇う余裕があるわけではない。これが、データのエコシステムが進化するにつれ、シチズンデータサイエンティストが重要になる大きな理由だ」(Rogers氏)
新しいエコシステムでシチズンデータサイエンティストが果たす役割
GartnerのリサーチアナリストAlexander Linden氏は2015年4月、シチズンデータサイエンティストを「ある程度のデータ分析スキルを持つような、数学や社会科学などの学位を持つ事業部門側の人間であり、その知識をデータの調査と分析に使用すると想定される」と説明している。
本物のデータサイエンティストは数が少なく、給料も高い(平均年収は11万9000ドル)が、数学や社会科学の学位を持つ頭のいい事業部門の人間であれば、ずっと少ない給料でこのギャップを埋められる可能性が高いという理屈だ。もちろん、そこにはトレードオフがある。
- これらの従業員は、データアナリティクスに関連する経歴をまったく、あるいはわずかしか持っていない可能性が高い。
- データの取り扱いに関するコンプライアンス、セキュリティ、プライバシーに関するリスクが高まる可能性がある。
- 素人のデータサイエンティストだけに任せれば、データの準備や解釈で勝手な行動を取ったり、他の事業部門の不利益になる戦略を立てたりする可能性がある。
プラス面として、シチズンデータサイエンティストは、本物のデータサイエンティストよりも企業がアナリティクスに求めている答えに近づける可能性がある。これは、事業に関する知識を持っているためだ。
例えば、大型機器の輸送方法に関する分析を行おうとするとき、純粋なデータサイエンティストは、輸送船の船幅が機器の専有面積と固縛に対応できるサイズでなければならないことを知っているだろうか?あるいは、特定の陸上経路では、道路や空港、水路のインフラだけでなく、その機器が既存の橋の下を通れる高さかどうかについても検討する必要があるという知識を持っているだろうか?
こういった物流に関する知識は大学の授業で教えられるものではなく、その事業に詳しい人間が持っているものだ。このような知識は、シチズンデータサイエンティストがケースを作るのに役に立つ。
企業やベンダーとシチズンデータサイエンティスト
企業の事業部門マネージャーと人事部門は、どの人材が末端の事業部門でシチズンデータサイエンティストに育つ可能性があるかを調べるため、社内人材の評価を行うべきだ。
ガイドラインを策定し、定期的な監査を実行し、分散環境にある会社全体でクリーンなデータプールを維持するためのベストプラクティスを提供する潜在的な新しい形のデータスチュワードシップの進化において、IT部門は事業部門の管理職と協力していく必要がある。このような作業がうまくいった例は少なく、超えなくてはならないハードルは高い。
ベンダーには、過去1年間進めてきたことを継続する必要がある。つまり、ITに関する経験が少ないエンドユーザーでも、簡単に使えるアナリティクスツールを提供するということだ。
提供:iStock/Rawpixel Ltd
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。