セキュリティ専門家Graham Cluley氏は「人間のパスワードの選び方は最悪だ」と書いている。SplashData(TeamsID)のレポートを読めば、Cluley氏の発言も当然だと思えるだろう。このレポートによれば、2015年にもっともよく使われていたパスワードランキングのトップは、「123456」と「password」だったという。
SplashDataの最高経営責任者(CEO)Morgan Sloan氏は、「2015年に漏えいした200万件以上のパスワードのデータに基づいて作成した、SplashDataの第5号の年次レポートによれば、新しく長いパスワードもランキングに登場しており、これはウェブサイトとウェブユーザーの両方がより安全性を高めようとしていることを示しているのかもしれない。ところが、これらの長いパスワードは単純すぎて、長くてもセキュリティを守る手段としてはほとんど価値がない」とも述べている。
Cluley氏は、パスワードを考え出して覚えるという作業から解放されるには、「推測不可能な完全に無作為のパスワードを生成して、それを人間の代わりに記憶しておいてくれる、パスワード管理ツールを使用することを勧める。パスワード管理ツールを使えば、アクセスしている複数のサイトで同じパスワードを使い回す必要もない」と書いている。
ただし、パスワード管理ツールも完璧ではない。例えば、人気のあるパスワード管理ツール「LastPass」は、それ自体は安全であるにもかかわらず、問題を抱えている。
「1月16日、セキュリティ研究者のSean Cassidy氏は、ハッカーの集まる会議であるShmooconで、LastPassに対するフィッシング攻撃のデモを行った」とLastPassの広報担当者は書いている。さらに「この攻撃では、ユーザーは悪意のあるウェブサイトに誘導され、そのページでLastPassの通知に似た通知が生成される。この偽の通知によって、ユーザーは自分がLastPassからログアウトしてしまったと思い込まされ、もう一度ログインするために、マスターパスワードと、2要素認証を有効にしている場合には、そのデータも入力するように誘導される」という。
広報担当者は、これはLastPassの脆弱性ではないとしている。同社は、この攻撃のリスクに対する緩和策を発表している。
新たな解決策
英プリマス大学Centre for Security Communication and Network Research (CSCAN)のAlsaiari氏、Papadaki氏、Dowland氏、Furnell氏からなる研究チームは、もっとよいアイデアを見つけたと主張している。論文誌Information Security Journal: A Global Perspectiveに掲載された同研究チームの論文「Secure Graphical One Time Password (GOTPass): An Empirical Study」(絵を使った安全な使い捨てパスワード方式(GOTPass)の実証的研究)の序論には、「考えられる代わりのソリューションは絵を使った認証だ。これは、人間の画像に対する記憶力は、テキストに対する記憶力よりも優れており、これがパスワードの使い勝手とセキュリティの改善に役立つという考えに基づいている」と述べられている。
絵を使った認証方式はこれまでにもあった。絵を使った認証は市場ではあまり人気がないが、同チームは楽観的だ。同チームが提案した複数の手段を組み合わせたアプローチは、多要素認証システムと使い捨てパスワードの性質を兼ね備えた、安全かつ「簡単に使える」手段を提供するという。論文には「GOTPassは、秘密の画像の列に基づいて入力される使い捨ての数字コードと、あらかじめ選択した入力フォーマットを使用して認証する」と書かれている。
文字と数字の代わりに画像を使う理由について、同チームは2009年のKaren Renaud氏とAntonella De Angeli氏による論文を含む、いくつかの研究を引用している。この2009年の論文には、「人間の持つ絵に対する記憶力は強力でほぼ無限であり、言葉よりもよく、長く記憶することができる」と述べられている。