年間案件が1.5倍でも社員数は同じ--ワークスタイル変革を進めるMSの本気

大河原克行

2016-03-11 08:00

 イベント「中堅中小企業が目指すべき『攻めのIT、守りのIT』」で日本マイクロソフト取締役で代表執行役社長の平野拓也氏が基調講演に登壇。「マイクロソフトが実践したワークスタイル変革と攻めと守りのIT活用」と題して講演した。日本マイクロソフトが掲げているワークスタイル変革を実践する上での課題解決への取り組み、その変革をITがどう支えたのかといった内容を解説した。

 平野氏は、「41年前、Microsoftが設立した際に創業者のBill Gatesはすべてのデスクと個人にPCを配置することを目指してきたが、今では、多くの人が複数のデバイスを持ち、1日平均すると4つのデバイスを使っている」と現在のワークスタイルの状況を解説した。

日本マイクロソフト 取締役 代表執行役社長 平野拓也氏
日本マイクロソフト 取締役 代表執行役社長 平野拓也氏

 「今、Microsoftは、地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにすることを目指しており、それを実現するために数々の取り組みを進めている。最近では、Windows 10に無償でアップグレードできるようにし、これまで競合といわれる会社とも握手をして協業を開始している。社内では、仕事の仕方がものすごいスピードで変化している。そうした体制のもとで、日本マイクロソフトは中堅中小企業がより多くのことを達成するように支援したい」

 平野氏はワークスタイル変革というキーワードについて「日本マイクロソフトにとってコア中のコアの取り組み。これに重点的に取り組んできた」と言及。「2011年3月の東日本大震災では、翌日からテレワーク体制を活用して、出社することなく、どんな支援ができるのかをパートナーやお客さまと直接話をした」という。

 「テレワークの取り組みを定着させるために、その後も、毎年テレワーク週間を実施してきたが、昨年は当社以外にも参加企業を募った。これは大手企業だからこその取り組みだと感じるかもしれないが、参加企業の60%が中堅中小企業。そこでテレワークによる成果が上がっている。だが、日本マイクロソフトも過去10年間に取り組んできたワークスタイル変革では3~4回は失敗している」

2015年のテレワーク週間は651の法人が参画した
2015年のテレワーク週間は651の法人が参画した

 だが、ワークスタイル変革で「売り上げ・生産性」「コスト」「風土・人材活用」という観点で多くの成果が上がっていることを示した。実際、日本マイクロソフトの状況を2010年度と2015年度とで比較すると大きな変化がみられている。事業生産性では26%増加、旅費と交通費が20%削減、ペーパーレス化が49%進展、女性の離職率が40%減少、ワークライフバランス満足度は40%向上しているという。

 「この5年間で1案件あたりの売上高は12%小さくなっている。そして、1年間に2000案件を受注していたものが3000件に増加している。案件が増加して、1件あたりの売上高が減少しているが、社員数はほとんど増えていない。1人あたりの仕事が増えていることになるが、調査をすると、社員満足度は上がり、女性の離職率は下がっている。ICTを活用したワークスタイル変革で成し得たものである」

 ワークスタイルを変革するには「経営者が強い気持ちを持って動かないと改革が進まない。制度やポリシーにも踏み込み、労務管理や社員の健康管理をどう担保するのかといったことが鍵になる。かつてのICTは、資金的余裕がある大手企業が使うものだという認識が強かったが、今ではクラウドによって安価な形で先進的なツールが誰でも使えるようになっている。ICTを活用したワークスタイル変革は、多くの企業が取り組むことができるものだ」と平野氏は現状を解説した。

 平野氏は続けて「“テレワーク=ワークスタイル変革”ではない部分もある」とし、「従来のテレワークは、産前産後や介護の場合など、一部の社員の仕事を切り出して会社で行っていたものを同じ環境とプロセスのまま自宅で行うというものだった。だが、日本マイクロソフトのフレキシブルワークスタイルでは、全員がいつでもどこでも必要な場所、好きな時間に仕事ができるもの。新たな仕事のスタイルを生み出しており、その点が一般的なテレワークとは異なる」と強調した。

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