SAS Instituteの年次カンファレンス「SAS Global Forum 2016」では、マーケティング向け新製品「SAS Customer Intelligence 360(CI 360)」とアナリティクス向け新製品「SAS Viya」が発表された。現地で両製品の特徴について製品担当者に話を聞いた。
データ断片化のマーケティング課題を解決
SAS Customer Intelligence 360は、顧客データの収集機能とパーソナライズ機能をSaaSで提供する。既存のマーケティングオートメーション(MA)ツール「SAS Marketing Automation」を補完するものである。
Customer Intelligence部門でPrincipal Product Marketing Managerを務めるJonathan Moran氏
デジタル情報のサイロ化が、消費者の行動にあわせたマーケティングキャンペーンの実行を困難にしており、マーケティング担当者を悩ませている。SAS Customer Intelligence 360は、こうしたデータ断片化の課題を解決するデジタルマーケティングハブとなる。
具体的には、「SAS 360 Discover」「SAS 360 Engage」という2つのモジュールで構成されている。
SAS 360 Discoverは、簡潔に言えばアクセス解析のツールであり、デジタル端末、モバイルアプリ、ウェブアクセスからデータを集める機能を備えている。データを時系列で分析できるオープンなデータモデリングを採用しており、自動で情報を加工し、SASの解析ツールやマーケティングオートメーション(MA)ツールと連携できる。
Customer Intelligence部門でGlobal Directorを務めるWilson Raji氏
ほぼリアルタイムでデータを取得できる点も特徴で、セッション単位ではなく、顧客単位でデータを統合できる。
SAS 360 Engageは、カスタマージャーニーの作成やオーケストレーション、CMS機能、ABテスト機能などを備えたパーソナライズツールである。同社のマーケティングツールで弱かったデジタルコンテンツの管理や実行に関する機能を補うことができる。
同社の既存の顧客分析ツールと連携する「ガイド付きアナリティクス」によって、どのセグメントに、どういうクリエイティブを、どのタイミングで配信するかといった判断を支援する。
分析環境をマイクロサービスで構築
SAS Viyaは、クラウドに対応した次世代アナリティクスアーキテクチャだ。PaaS構築用ソフト「Cloud Foudry」に対応し、マイクロサービスのように分析環境を構築できる点が最大の特徴だ。
Cloud and Platform Technologies部門でPrincipal Product Managerを務めるRobby Powell氏
SAS言語だけでなく、Python、Java、LuaといったSAS以外のプログラミング言語からも利用可能である。また、REST APIをサポートするほか、サービスとして利用することが可能な新たなオープンAPIも提供する。
インメモリエンジンを刷新し、メモリ領域に収まりきらないデータをハードディスクにステージングしながら作業できるようになった。これによってデータ量に制約がなくなったとしている。インメモリクラスタに障害が発生した際にも、プロセスを継続できる機能が組み込まれた。
既存製品と新製品を順次対応させていく予定であり、2016年にはビジュアルデータ探索の「SAS Visual Analytics」、予測モデルを開発する「SAS Visual Statistics」、プロセス改善や不正検知などを調査する新製品「SAS Visual Investigator」、データマイニングと機械学習の新製品「SAS Visual Data Mining and Machine Learning」をSAS Viya向けに提供する。
SAS Viyaという単一基盤上に分析環境を統合することで、「データ管理」から「データ探索/可視化」「データ分析/予測モデル開発」「業務への組み込み」に至るまでの“アナリティクスライフサイクル”をより効率的に回せるようになるとしている。