Huaweiは6月26~29日にかけて、中国の深センにある本社で企業向けITへの成長戦略を説明するツアーを開催した。日本では消費者向けのスマートフォンなどで馴染みがある中国Huaweiは、キャリア向けネットワーク製品ではエリクソン(スウェーデン)と並ぶ規模の売り上げがあり、データセンター向けスイッチでは世界4位の企業である。中国国内の内需に加え、中東やアフリカなどで実績を持ち、170カ国に事業を展開、従業員17万人を擁する。
2011年からはサーバやネットワーク、ストレージなどを提供する法人向けIT事業を開始し、数年でサーバ出荷台数は世界第4位に、売り上げは2015年度は42億5000万ドルに成長した。このうち、76%をパートナーの売り上げが占める。
業績が伸びるにつれ、スマートシテイや、教育、金融など多様な業界での事例が生まれている。例えば注力しているというスマートシティ領域のサービスではケニアの首都にあるナイロビ大学に向け、カメラやセンサを組み合わせたセキュリティシステムを構築したほか、サウジアラビアで火災などの緊急通報ダイヤル「911」のコントロールセンターを設けた。金融分野では、ロシア中央銀行へのカード決済システム導入や広告配信のCriteoのHadoopクラスタ構築など、実績を重ねている。
Huaweiの戦略
法人向けICTソリューション事業グループ 産業ソリューション担当最高技術責任者 Joe So氏
このように成長を続けるHuaweiの戦略とは何か。
Huaweiの法人向けICTをまとめる、法人向けICTソリューション事業グループ 産業ソリューション担当最高技術責任者 Joe So氏 はこう話す。「われわれの戦略は業界動向を見据え、最新技術を取り入れた製品やサービスを提供すること。その際、技術をオープンにすることでベンダーロックインを避けて利用企業をを最大化し、OSSの開発者や標準化団体などとともにエコシステムをつくることに注力している」(So氏)
Huaweiは、いまやICTがビジネスの中核を担っているという認識を示している。同社が提供しているサービス群がカバーする、PaaSやSaaS、ビッグデータ基盤など“クラウド”、SDNやモバイルなどネットワークを示す“パイプ”、そしてモノのインターネット(IoT)などセンサをとりつけた“デバイス”という3つのレイヤをいかに製品やサービスで連携させるかが重要であるととらえている。
Huaweiはこうしたクラウドやビッグデータ、SDN、IoTといった領域に注力しており、SDNおよびNFV製品やサービスはもちろん、ハイブリッドクラウド構築基盤「FusionCloud」、ビックデータ分析基盤「FusionInsight」などを展開している。
特にIoT領域では「1-2-1」と呼ぶインフラ戦略をとる。最初の“1”は、統合されたIoT基盤でありデータ収集と分析を担い、“2”は、無線/有線といった接続方式であり、同社がIoT向けの無線通信方式として推進する「NB-IoT」などのネットワーク推進戦略だ。最後の“1”は、容量は10Kバイトという独自のIoT向けOS「LiteOS」である。IoT領域でもエンドツーエンドで製品を提供できるのが強みを見せる。
IoT領域でのインフラ戦略「1-2-1」
成長市場でユーザーに選ばれる製品を開発するため、R&Dには特に注力しているという。17万人の従業員のうち、45%にあたる7万9000人が研究開発関連職に就かせ、売り上げの10%以上をR&D分野に投資し、製品に競争力を持たせてきた。過去10年の研究開発投資は4兆4520億円に上るという。
こうした成長分野に向けた製品やサービスを提供するだけでなく、製品やサービスのAPIをベンダーロックインを回避するためにシステムがオープンであることにも重点を置いている。3000以上のAPIを公開しており、Huaweiが提供する開発プラットフォーム「eSDK」により、ユーザーは自社のシステムをそのままHuawei製品とつなげられるとした。
このように製品やサービスをオープンにして連携するとともに、売り上げの76%を占めるパートナーとの連携をさらに深め、OpenStackなどのOSSコミュニティや、同社が進めるIoT規格「NB-IoT」標準化団体への貢献などによりHuaweiのエコシステムを構築しているという。
成長市場で多大な投資により開発した製品やサービスを組み合わせ、Huaweiが特に注力するのはスマートシティ分野だ。発展を続ける中国国内で大きなニーズがあり、街をスマート化するとなれば多くのネットワーク製品を提供できるためだ。「スマートシティ構築には緻密なプランが必要だが、全体を構築するチャンスは少なく、われわれは数多くの実績を持つ」(So氏)
So氏によると、日本もまた、スマートシティ化する条件が整っており、ターゲット国の一つという。「日本には4Gネットワークが通っており、すぐにでもスマートシティ化できるチャンスがある。クオリティの高いサービスが必要な日本でユーザーが認めたスマートフォンは、品質の点で世界で求めてもらえる。テストベットに成り得るのは証明済み」 (So氏)
Huaweiはこれらの戦略により、2015年度の売り上げ42億5000万ドル、2018年まで年平均成長率は40%超で成長させ、2018年100億米ドルを達する見込みという。So氏は「100億米ドルという数字は2019年の目標だったが1年前倒しで達成できる予定」と説明、今後の成長に自信を見せていた。