Javaのエンタープライズ向け機能セットであるJava Enterprise Edition(Java EE)の開発が停滞しており、この背景にはJava EEに対するOracleの取り組みが著しく減速している現状があると報じられている。
Ars Technicaが、「How Oracle’s business as usual is threatening to kill Java」と題した記事で、OracleのJavaに対する取り組みが減速しており、特にJava EEの開発はそれが原因で停滞していると報じた。
同記事によれば、Java EEの開発は事実上停止しており、これまでJavaプラットフォームに貢献してきたJava開発コミュニティのメンバーからは懸念する声が上がっている。Oracleはすでに、Java EEに投じていた予算や人員の多くを引き上げたとも伝えられている。
登場から20年経ったJavaの裾野は広がっており、さまざまな場面で利用されている。Javaの仕様は、開発コミュニティの企業や個人が参加するJCP(Java Community Process)と呼ばれる仕様策定機関で決定されている。しかし、最近ではJCPの仕様策定プロセスは事実上OracleのOpenJDK開発者によって無力化されつつあり、JCPからのインプットがないまま実装が進められているような状況で、同社のJavaに対する姿勢には批判も多いと記事にはある。
このような中、OracleやJCPの管理が及ばない形で、独自にJava EEの機能強化を進めようとするグループも登場している。そのグループとは、Java EE GuardiansとMicroProfile.ioだ。ただし、Infoworldの記事によれば、これらのグループはこの取り組みを「fork」とは呼んでおらず、できることはJava EE Guardiansは既存のJava EEのAPIは一切使用せず、ゼロからAPIを作り直すことだとしている。これは、オープンソースの世界で言うforkを行うことは、法的なリスクが大きすぎるからだという。
Oracleは意思決定のプロセスが外部から見えにくい企業の1つであり、同社の真の意図は推測するしかない。Ars Technicaの記事によれば、開発コミュニティのほかのメンバーが開発を続けられるよう、Javaプラットフォーム自体をほかの組織に寄贈することを望む声もあるが、元Oracleのバイスプレジデントであり、現在はEclipse Foundationのエグゼクティブディレクターを務めるMike Milinkovich氏は、株主への責任なども考えれば、10億ドル規模の資産を単純にオープンソース化することは考えにくいと指摘しているという。
また、JCP執行委員会の委員であるGeir Magnusson氏は、OracleがJava EEを他の組織に譲らずにこのまま開発を止めることで、競合他社のソフトウェアスタックは陳腐化し、競争が有利になると考える可能性もあるという考えを述べているとのことだ。ただし、もしそれが実行された場合、顧客に大きな影響が及ぶ。一方で同記事には、OracleにとってのJava EEの戦略的意義はJava SEほど高くないが、依然として大きな収益源の1つであり、Java EEの開発を継続するインセンティブはあるという意見も挙げられている。
もしこのままJava EEの開発が止まってしまえば、多くの企業が悪影響を被る可能性が強い。