Bluetoothを自動車ワイヤーハーネスの代替に--広がるアプリケーションの可能性

怒賀新也 (編集部)

2016-08-01 08:15

 Bluetooth Special Interest Group(Bluetooth SIG)は、年末から2017年度の初めに提供予定の最新版の名称が「Bluetooth 5」であることを米国時間の6月16日に発表した。通信範囲や速度の向上により、IoTなどに向けた新たなアプリケーション構築が可能になると言われる。

 発表の際に来日したBluetooth SIGのエグゼクティブディレクター、Mark Powell氏に、Bluetoothの今後の展開について話を聞いた。

 新版であるBluetooth 5は、前版と比較して通信範囲が4倍、低消費電力のまま通信速度が2倍になること、コネクションレス型データブロードキャストの容量が8倍になることなどが特徴。これにより、Bluetoothデバイスによる情報伝送方法の考え方は、アプリとデバイスをペアリングしたり、アプリをダウンロードしたりする必要がなくなる「コネクションレス型IoT」へと移行しつつあるという。

Bluetooth SIGのエグゼクティブディレクター、Mark Powell氏。Bluetooth SIGのボードミーティングのために来日。今回のホストは東芝だったという
Bluetooth SIGのエグゼクティブディレクター、Mark Powell氏。Bluetooth SIGのボードミーティングのために来日。今回のホストは東芝だったという

 Bluetoothの性能強化によって、構築できるアプリケーションの幅も広がる。バッテリの小型化、大容量化といった利点も交え、現在なら自宅内の壁越しくらいの通信範囲を前提にしていたものを、庭など自宅の外にも広げられるという。

 Powell氏は「ロンドンの地下鉄では、ビーコンを使って目の不自由な人の階段の乗り降りを支援するような仕組みも生まれている」といった例を紹介している。

 Bluetooth SIGとして将来的に力を入れようとしているのは、IoT領域でのBluetooth活用だ。「2020年に450億台と予想されるデバイス数のうち、150億台にBluetoothを搭載する」という数字的な目標も立てている。

自動車、産業分野への適用を進める

 具体的には、スマホ/スマートビルディング、インダストリ(産業向け)、自動車の3つの領域を挙げる。

 自動車では、現状は電力や信号、さまざまな製品をつなぐ役割を持つ「ワイヤーハーネス」で制御しているものを、Bluetoothによる制御に置き換えるような使い方を想定しているという。具体的には、タイヤの空気圧情報の取得や、ライトのオンオフ、エンジン性能に関するリアルタイムデータなどだ。

 自動車メーカーを含めて、Bluetooth SIGは既に多くの大手企業が参画しているため、「中小規模の企業の参画を促したい」としている。

 規格としては、Bluetoothのほかにも、3G、LTE、Wi-Fi、ZigBee、Sub 1GHzなど多数の無線通信技術があり、ユーザーによるBluetooth採用に当たって優位性を強調していく必要が出てくる。

 これについて、Powell氏は「既に3万を超えたメンバー数があり、2015年も14%増という高い増加率だった」とアピール。文字通り、ネットワーク外部性によるブランド力を強みとして認識している。

 また、既に30億台以上のデバイスが出荷されていることもあり、相互接続性が高いこと、Bluetoothを活用したアプリケーション開発において、開発ツールがあること、さまざまな開発者サポートプログラムを用意していることなども挙げる。

 今後の展開として、Bluetoothデバイス同士が相互に通信することで、ビルや住宅全体をカバーするネットワークを自律的に形成できるようにするという「Bluetooth mesh」を発表する予定がある。「産業オートメーション、ホームオートメーションの可能性が一気に広がる」とPowell氏は指摘した。

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