Amazon Web Services(AWS)の最初の一手は、顧客がアップロードしたカスタムコード(Lambda関数)をサーバレスなコンピュート環境で実行可能にするという「AWS Lambda」だった。そして同社は次に、アナリティクス向けのマネージドサービス「Amazon Kinesis Analytics」という手を打ってきた。何年かすると、顧客はAWSからIaaSではなく、同社が提供するマネージドサービスや、コード実行代行サービスを購入する時代がやって来るはずだ。
AWS Lambdaの概要
AWSは自動化を特長ではなく必須要件として捉えているため、サーバ面でLambdaという道を選択したように、アナリティクス面でマネージド型のサービスという道を選択したとしても驚くには値しない。
AWSの最高技術責任者(CTO)Werner Vogels氏は米国時間8月11日、ニューヨーク市で開催された「AWS Summit」で、自動化に関する同社のビジョンを説明した。その主旨は、クラウドのインフラが仮想マシンやコンテナなどから、プロセスや関数の世界にシフトしていくというものだった。Vogels氏は「サーバレスコンピューティングの世界は、コンテナファイルではなくLambda関数が織りなす世界となる」と述べた。同氏はこの点を強く印象付けるために、サーバはその昔、ペットのように大切に扱われており、その後に仮想マシンやコンテナが番号によって識別される家畜の時代が到来したと述べたうえで、今後は家畜の群れを1つのものとして見るサーバレスの時代が来るとスライドを交えて説明した。
「牛はいない。存在するのは群れだけだ」
サーバレスというアプローチは既に実証されており、AWSはインテグレーターのエコシステムやフレームワーク、ユースケースといった成果を手にしている。
自動化は特長ではなく必須要件だという考え方に目を向けると、AWSの最近の動きはすべてがつながり、舞台裏であらゆるものをマネージドサービスにしようとしていることが見えてくるはずだ。それにはアナリティクスも含まれている。
そしてAWSは11日、標準SQLを利用してストリーミングデータの処理や分析をするマネージドサービスKinesis Analyticsを一部リージョンで提供開始した。AWSによると、これを利用することで企業は、新たなプログラミングスキルを学ぶ必要性や、「Amazon Simple Storage Service(Amazon S3)」や 「Amazon Redshift」「Amazon Elasticsearch Service」といったAWSのサービスを管理する必要性から解放されるという。Kinesis Analyticsは縁の下でリソースのプロビジョニングや配備、スケーラビリティの管理をしてくれる。
AWSは既にKinesis Analyticsの顧客としてMLB Advanced MediaやJustGivingといった企業を抱えている。Kinesis AnalyticsがLambaと同じ道を進めば、他の企業も同サービスを利用するようになるだろう。
Kinesis AnalyticsとLambdaはいずれも、スケーラビリティや耐久性、利用可能性を縁の下で支えるものであるため、顧客は実行したいと考えているコードに注力できるようになる。
こうした動きが向かう先は分かるはずだ。将来的に、顧客はAWSからインフラサービスではなく、コード実行代行サービスを購入するようになるだろう。AWSが2015年に手を打ったのはコンピュート分野だった。2016年はアナリティクス分野だ。すべてが発表され、実行に移された暁には、顧客がAWSで購入、配備していたインフラは同社によって自動化、抽象化されるようになっているはずだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。