リクルートホールディングスは8月29日、高知県と地方創生をテーマとした業務連携の協定を締結すると発表した。この協定に基づき、リクルートの事業育成機関である「Media Technology Lab(MTL)」は高知県を舞台に地方創生をテーマとした新規事業開発プログラム「Recruit Ventures」を実施、審査を通過したプランにリクルートが投資して事業化する。
このプログラムはリクルートの全従業員が応募でき、高知県でのフィールドワーク、その他ワークショップによって検討を重ね、高知県をはじめとする地域が抱える社会課題を解決できる事業の創出を目指す。
この協定から、下記の3つをテーマに新規事業開発プログラムを実施する。(1)「地域の中小企業の事業承継・担い手のマッチング事業」(2) 「高知県中山間地域の地域産品の6次化(農林水産業が、生産物を原材料とした加工食品の製造・販売や観光農園のような地域資源を生かしたサービスなどへ展開すること)のプロデュースや販売促進するビジネスの横展開モデル」(3)「高知県の山間部を舞台とした『森林資産』運用ビジネススキーム」
リクルート代表取締役社長兼最高経営責任者(CEO)の峰岸真澄氏は、ビデオメッセージで、日本の地域社会に(シェアリングエコノミーなど)時代にあった仕組みを持ち込み、新しい「循環」を作りたいと強調。今後日本だけでなく欧州や、中国など世界中で社会問題化する可能性がある人口減の問題を見越し、ノウハウを蓄積する。
県知事の尾﨑正直氏は高知県が全国に15年先行し、1990年から人口自然減の状態に陥っている「課題先進県」であると説明。人口減により経済規模が縮小、若者が県外に流失し、さらに過疎化や高齢化が進行し少子化が加速する「負のスパイラル」に対し、施策を打ってきたという。
具体的には地域外商などを推進する「高知県産業振興計画」の取組みにより、生産年齢人口の減少に連動する形で減少傾向にあった各産業分野の産出額などが上昇に転じており、リクルートとの提携によりこの勢いを加速させたい考えだ。また、8月5日には高知県IoT推進ラボ研究会などを発足、テクノロジとビジネスの両面から産業を振興する。「(さまざまな事例から)IoTは第一次産業でこそ効力を発揮しそうだと考えている」(尾﨑氏)
会見を通じ、繰り返し述べていたのは“担い手”の不足だ。登壇した内閣官房のまち・ひと・しごと事務局の村上敬亮参事官は、「長野県の地獄谷野猿公苑には温泉に入る猿がみられるとして東京から足を運ぶ外国人が増えているものの、1泊5万円の出費を惜しまない外国人の受け皿になるサービスがないため、日帰りで帰ってしまう。一方、リスクを取ってそうしたサービスをやろうとする人がいない、つまりライバルがいない。事業価値と社会価値を両立するビジネスなら成功の可能性は高い」と説明。地域でのビジネスの可能性をアピールしていた。
尾﨑正直県知事(右)とリクルートホールディングス 執行役員 冨塚優氏 (左)