サービタイゼーション

製造業の活路はサービタイゼーション--ものづくりの行き先

垣貫 己代治(サービスマックス) 2016年08月31日 07時30分

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製造業は、これまでのように生産した製品を販売することで稼ぐのではなく、製品をサービスとして提供することによって稼ぐ時代に変わってきている。この新たなビジネスモデルは「サービタイゼーション」と呼ばれている。本連載では、製造業がサービタイゼーションを推し進めるためのポイントを紹介していく。

 日本はものづくり国家です。昭和40年生まれの私の世代には「日本人はものを作ってナンボ」といった考え方が身体に染み込んでいるように思います。ただ、海外に目を向けてみると、日本の製造業と激しい競争を広げてきた特に米国・欧州の製造業には、ものづくりだけではない「サービタイゼーション」という考え方が広がり始めています。

 本連載では、「サービタイゼーション」とは何なのか、それを推し進めるには何が必要なのかについて考えていきたいと思います。

 今回は、「サービタイゼーションという概念がなぜ生まれたか」について考えてみましょう。この背景には現在の製造業を取り巻く環境の変化があります。主だったものとしては、次の3つが挙げられると思います。

  • (1)プロダクトのコモディティ化
  • (2)製造モデルの変革
  • (3)ガラパゴス現象

 「プロダクトのコモディティ化」については、読者の皆さんも日常生活の中で実感される機会が多いことと思います。

 私自身、自宅を新築した2001年にどうしてもリビングに薄型テレビ(当時は壁掛けテレビなどと呼ばれていた)を置きたくて、家計をやりくりして購入に踏み切った記憶があります。当時はインチあたりの単価は約2万円程度でした。

 このテレビもそろそろ寿命が近づいてきたので、先日買い替えのために近所の家電量販店に行ったところ、安いものではインチあたりの単価が1000円台になっており、ずいぶん驚きました。

 これはおそらく皆さんも経験したであろう身近なコモディティ化の例ですが、この原因として考えられることとして、製造拠点のグローバル化(中国/韓国/新興国など)、設計思想の変化(モジュール vs インテグラル)、さらには製造業のドメイン多様化などが挙げられるのではないかと思います。

 また、一般消費材だけが対象と言われていたコモディティ化が、BtoBの生産財にまで広がってきているとも言われています。

 次に、「製造モデルの変革」についてですが、これは日本の製造業に限らず、欧米の製造業にも当てはまります。1980年代から2000年代の30年間を振り返ると、10年ごとに「垂直型モデル」「水平分業モデル」「垂直型モデル」を繰り返したと言われています。

 垂直型モデルとは、部品のような構成品から完成品までのすべてを社内で手がけるモデルであり、製品の完成度やブランド化を追求することに主眼が置かれていました。

 一方、水平分業モデルとは、開発や製造などの工程をアウトソースしてものづくりの効率化を図り、コスト減、リスク減、ものづくりの柔軟性を強化しようとするモデルです。

 おそらく2010年代にある企業が現れるまでは、世界のほとんどの製造業は、このサイクルがしばらく継続するのではないかと考えていたのではないでしょうか。その企業とは、米Appleです。Appleが新たに生み出した製造モデルは、従来にはない限りなく垂直型に近い水平分業であり、「アップルモデル」とも呼ばれます。

 このモデルでは、自社の競争優位にとって重要な機能、工程(販売戦略を含む)はブラックボックス化するというもので、それまでの製造モデルを一気に過去に追いやることとなりました。

 「ガラパゴス現象」について、多くを語る必要なないと思います。筆者自身もNTTドコモの携帯電話で提供される「iモード」のヘビーユーザーでした。ただ、日本人特有のこだわりを武器にする、とでも言うのでしょうか、このガラパゴス現象を逆手にとって、成功している例もあります。

 例えば洗浄器付便座やマイナスイオン家電などは、米国やアジアではコピー商品が出るほどの人気商品になっています。しかし、ガラパゴス現象が日本の製造業を直撃し、大きなダメージを与えたことはまちがいないでしょう。

 このような製造業を取り巻く環境の変化の中で、従来のように、ものを作れば売れる、良いものさえ作っていれば競合他社よりも優位に立てるという考え方は過去のものとなりました。

 世界の多くの製造業は、従来の“川上”(設計・製造・商品開発など)中心の経営戦略から、“川下”(流通・販売を含めた顧客接点)へ経営戦略の舵を大きく切り始めました。

 つまり、他社による模倣や複製・技術革新など競争優位を失うリスクのある川上での競争から、市場・顧客・ネットワークといった外部との接点を中心に置いた川下の競争へと軸足を移しつつあります。

 この顧客中心型かつサービス志向型の「顧客にとっての価値を作る」という考え方こそが、「サービタイゼーション」の概念の源泉と言えるでしょう。次回は、このサービタイゼーションに向けた具体的施策について考えていきたいと思います。

垣貫 己代治
サービスマックス日本法人代表
外資コンピュータメーカーで製造業を中心とした営業に従事し、シスコシステムズ、ネットワーク・アプライアンス(現ネットアップ)、富士通を経て、国内ITセキュリティ・コンサルティング企業の立ち上げに参画。2007年にナイスシステムズに入社し、日本法人代表取締役に就任した。2010年からアスペクト・ソフトウェアの日本法人代表を歴任後、2015年5月より、米ServiceMax日本担当バイスプレジデント兼日本法人代表。

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