iPhone 7の発表は、おおよそ予想されていたものの、Apple Watchシリーズ2が「ポケモンGO」に対応するなど、ライブ中継を見て興奮した人は多いのではないだろうか。
そして、ゲームとは無縁な筆者でも、「おっ!」と声をあげてしまったのが、日本の独自の非接触型ICカードの技術方式である、FeliCa(フェリカ)に対応したことだ。Appleは、過去にも新しい技術方式に対応してきたが、多くはグローバルで多く利用されているものであり、特にアメリカを中心としたものだった。それが、自国ではなく、また人口が多い中国やインドでもなく、日本独自の技術に対応したことには、とても大きな驚きを覚えている。
サンフランシスコのイベント会場にいた筆者の友人の話によると、Appleのワールドワイドマーケティング担当上級副社長であるPhilip Schiller氏が壇上で「FeliCa」の文字を見せたとき、そして「Suica」のロゴを見せたときの会場は、ほぼ静まり返っていたそうだ。その中で、一部の日本人記者の驚きの声が聞き取れたということだった。それほど、記者会見に参加した多くの米国記者の心を打たなかったとも言える。しかし、われわれ日本のiPhoneユーザーにとって、待ちに待ったサービス提供だ。筆者は、おサイフケータイ機能を使うためだけにAndroid端末のXperiaを使っている。チャージするとき以外は、ほぼ起動しない、というもったいない使い方だ。つまり、おサイフケータイ機能以外は、すべてiPhoneで賄えるという裏返しでもある。
では、Suicaが使えるようになったことは、iPhoneを法人ユースする上で企業にどのようなメリットがあるのだろうか。
Apple Payとはなにか?
まず、今回SuicaをサポートしたApple Payとは何か。一般的に、POS(Point of System)と呼ばれる、販売時点情報管理用の非接触型iOSアプリのことだ。クレジットカード、デビットカードなどの取引情報を、信用照会端末で読み取るものになる。2014年10月にアメリカでスタートし、その読み取り速度の早さで人気を博した。その後、2016年2月に中国、4月にはシンガポールと、アジアでの展開も始まり、日本での展開が期待されていたのだ。
一方、日本のSuicaの技術の背景は、ソニーが開発したFeliCaだ。そして、FeliCaを使ったICカードは多く、JR東日本のSuica、関東の私鉄を中心に展開しているPASMO、JR西日本のICOCAなど、鉄道系のカードが有名どころ。それ以外に、Edyやnanacoといった個別のカードも、技術的にはFeliCaを利用している。
iPhoneで使えるApple Payでは、一般的なクレジットカード、アメリカンエキスプレスやマスターカードという世界的なカード以外に、今回セゾンカードや三井住友カード、さらにはソフトバンクカードといった通信事業者のクレジットカードも対応してきた。つまり、iPhoneを日本のおサイフケータイのようにかざすだけで、クレジットカードでの支払いが可能になるのだ。
そこに今回、JR東日本のSuicaを対応させてきたことが、われわれ関東のビジネスパーソンにとっては、とても便利に感じているところなのだ。このFeliCa、日本だけで普及していると思われがちだが、実は日本よりも早い1997年に香港のオクトパスカードとして採用され、2002年にはシンガポールのEZ-Linkとして採用されている。今年になってApple Payがシンガポール、香港でスタートした流れから考えると、日本で展開するのは当然と言えるだろう。