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新着記事集:「負荷分散」

こんなに動けるPepper見たことある? NSSOLシス研の取り組み

羽野三千世 (編集部)

2016-09-28 10:00

 最近は会社の受付などでよく見かけるようになった人型ロボット「Pepper」。人の会話、顔、感情を認識するエンジンを搭載し、話しかけるとかわいい声で応答する。ところで、このPepperくん、接客のために受付や店舗にじっと直立していることが多い。Pepperの本体底部にキャタピラがあり動ける仕様にはなっているが、HONDAの「ASIMO」のような人間らしい足がないこともあり、あまり歩き回っているイメージがない。

 そのイメージをくつがえすのが、新日鉄住金ソリューションズ(NSSOL)のシステム研究開発センター(シス研)にいる2体のPepperだ。シス研のオフィスでは、Pepperが自律歩行している光景を見ることができる。


オフィスを歩き回るPepper

自律歩行のための仕組みを独自に追加

 NSSOLのシス研は、1987年に新日鉄(当時)が製鉄事業以外の分野に進出するべく立ち上げたソフトウェア研究を行う組織だ。早くから、人工知能(AI)、拡張現実(AR)などを利用したシステム開発に着手し、そのビジネス利用について研究してきた。現在は、「データ分析・基盤研究部」、Software Defined Network(SDN)関連の研究開発を担う「システム基盤技術研究部」、その他いろいろな先端技術のビジネス利用を研究する「イノベーティブアプリケーション研究部」の3組織で構成されている。

 自律歩行するPepperは、ロボットのオフィス業務への活用可能性を研究する目的で、イノベーティブアプリケーション研究部 研究員の古田裕介氏が中心となって開発しているものだ。

 「Pepperを自律歩行させることが目的ではなく、ロボットがオフィスで働くことを考えたとき、歩行できたほうが仕事の幅が広がるであろうという観点から、まず歩行する仕組みを実装しました」と古田氏。自力でオフィスを移動させるために、ロボット用基盤ソフト「ROS(Robot Operating System)」を使ってPepperにオフィスの地図情報を持たせる仕組みを追加した。


ロボット用基盤ソフト「ROS(Robot Operating System)」を使ってPepperにオフィスの地図情報を持たせている

 この仕組みでは、Pepperが壁の位置などを3Dで認識し、地図情報の間取り図と照らし合わせながらプログラムされた目的地まで移動する。さらに、進路にいる人や障害物を認識して、衝突しないように停止するようになっている。物体を認識するセンサはもともとPepperの目の部分に搭載されているが、「精度がそれほど安定しておらず、また目のように見せるために黒いカバーがついているので正確に距離が測れませんでした。目をくり抜いてしまえば精度が出たのかもしれませんが、それはかわいそうで」(古田氏)

 そこで、シス研のPepperは、腹部に外付けのセンサが取り付けられている。加えて、地図情報を持たせるためのノートPCが後頭部に有線で接続されている。移動の際は、ノートPCをかばんに入れて持ち歩くが、かばんをどのようにぶら下げるかは試行錯誤だったという。「腰の後ろにぶらさげると熱がこもり、Pepperが50メートルも歩くと停止してしまいました(Pepperは熱がこもると自動的に停止する)。歩行のバランスも考慮しなくてはいけない。いろいろ試した結果、今は腰の前の位置にぶらさげています」(古田氏)


地図情報を持たせるためのノートPCが後頭部に有線で接続されている

Pepperのオフィスでの仕事

 この自律歩行するPepperは、オフィスでどのような仕事をしているのだろうか。古田氏は、第一弾としてPepperに届け物させる「Pepper宅配便」のシステムを開発・実装した。「この人に書類を届けて」とPepperに音声で依頼して書類をかばんに入れてやると(Pepperの手は物をつかむようにはできていない)、地図上の座席情報を基に受取主のデスクまでPepperが届けてくれるものだ。

 Pepperの標準機能である顔認識を使うことで、送り主や受取主を見分けて「~さんからお届け物です」と伝えたり、受取主が不在だった場合には「代わりに~さんに預かってもらった」というデータを記録して報告したりできる。

 そのほかに、ロボットのオフィスでの仕事として、「人が言うと角が立ってしまうようなことを言ってもらう」用途が効果的ではないかと古田氏は言う。例えば、会議やプレゼンのタイムキーパーをロボットにまかせて「時間です」と言ってもらう。これを実際にシス研の会議に導入してみたところ、「人が止めても話し続けるタイプの社員が、Pepperに言われると話をやめました」(古田氏)。この用途では卓上型のロボットが適しているので、今後、別のタイプのロボットで検証していきたいという。

ロボットが好き


新日鉄住金ソリューションズ システム研究開発センター イノベーティブアプリケーション研究部 研究員 古田裕介氏

 古田氏は入社2年目の若手研究員。大学でもロボットの研究をしていた。「大学では、ロボットに家事支援をさせる研究をしており、人の指示でロボットに掃除などの動作を教える方法などがテーマでした」(古田氏)

 ロボットに囲まれていた大学研究室を卒業して、ソフトウェア研究が専門のNSSOL シス研に入社し、今後はロボットそのものよりも操作プログラムなどの研究をやるつもりだったそうだが、シス研でも引き続きロボットと一緒にいる。「結局、ロボットが好きなのだと思います」(古田氏)

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