シスコシステムズは9月28日、社員100人以下の中小企業に向けて日本語化と低価格化を前面に打ち出したネットワーク機器のブランド「Cisco Start」を強化した。IOSを搭載したCatalystブランドのスイッチでありながら価格設定を4万円台からとした「Cisco Catalyst 2960Lシリーズ」をラインアップに追加した。10月から販売する。
Cisco Catalyst 2960Lシリーズの外観
社員100人以下の企業には、予算やIT管理者が少ないという特徴がある。この市場では、設定画面が日本語化されていることと、サポートを含めた製品価格が安いことが求められる。シスコシステムズでは、この需要に応える製品群として、新製品のルータ「Cisco 841M Jシリーズ」を中核に、2005年9月にCisco Startブランドを開始した。Cisco Startの販売パートナーは、2015年10月時点の60社から2016年9月現在では1797社へと増えた。
今回のCisco Startブランド強化のハイライトは、スイッチ機器としてCisco Catalyst 2960Lを追加したこと。この背景をシスコシステムズ 専務執行役員 パートナー事業統括 高橋慎介氏は「Cisco Startを開始してから1年間でSOHO向けルーターの市場シェアを9%から16%に伸ばすことに成功した。ルーターの導入を契機にスイッチや無線LANの導入意欲が広がっている。ここに製品を投入する」と説明する。
Catalystスイッチが4万円台から
シスコシステムズ 専務執行役員 パートナー事業統括 高橋慎介氏
Cisco Catalyst 2960Lは、オフィスに設置して社員のクライアントPCを収容する、いわゆる“島ハブ”の用途に向いたレイヤ2スイッチ機器だ。先行するルータと同様、同社の他のネットワーク機器と同様にOSソフトウェアとしてCisco IOSを搭載するとともに、日本語のウェブGUIを備える。
価格は、8ポートモデルで4万円台からと低く抑えた。これに対して、既存のCatalystブランドのエントリー製品「Cisco Catalyst 2960-C」は、10万円を超える程度の価格で販売されている。Cisco Startは10万円を切る価格がコンセプトなので、より安価な製品が必要だった。
製品化に当たり、日本の小規模企業の需要を製品仕様に反映した。例えば、「日本の島は10人以上が向かい合わせなので、8ポートでは少ない」(高橋氏)という需要から、16ポートモデルを用意。8ポートモデルと16ポートモデルについては、鉄製の机の側面に張り付けられるようにマグネットを装備した。さらに、静音性を保つため、48ポートのPoE(Power over Ethernet)モデルを除いてファンレスとした。
非IOSスイッチと無線LAN製品も刷新
今回のCisco Startの強化では、Cisco IOSが不要なユーザーに向けたスイッチも刷新した。これまで提供してきた「Cisco SG300シリーズ」の後継として「Cisco SG350シリーズ」を用意した。価格は3万円台からで、9月から販売している。既存製品との違いは、USBポートを搭載したことなど。これにより、運用管理性が高まった。
Cisco SG350は、Cisco Catalyst 2960Lと異なり、OSソフトウェアとしてCisco IOSを搭載していないので、IOSのCLI(Command Line Interface)を使うことはできない。他のCisco Start製品と同様に、ウェブGUIは日本語化されている。「小規模企業の多くは、(SNMPで管理できないといった)管理性の悪いスイッチを使っている。だから管理性の高いCisco SG350を提供する」(高橋氏)
無線LANアクセスポイントのラインアップも強化した。無線LANコントローラを内蔵した上位製品「Cisco Aironet 1830/1850シリーズ」は、既存製品にはなかった日本語ウェブGUIを搭載した。さらに、無線LANの最新規格であるIEEE802.11ac Wave2を実装した。
Cisco Startの無線LAN製品群の外観
無線LANアクセスポイントの下位製品で価格を1万2000円程度に抑えた「Cisco Wireless Access Point(WAP)シリーズ」も用意した。運用管理性にも注力しており、複数台のWAPシリーズでクラスタリングを組んで設定情報を同期させる使い方もできる。
文教向けの割引プログラムと販売体制を整備
文教分野向けの販売も強化する。具体的には、Cisco Start製品群の中から文教分野に向いた製品を選び、文教分野向けの割引プログラムを適用する。さらに、販売パートナを支援する体制として、シスコシステムズの文教分野向けチーム内に、販売パートナに対してネットワーク機器の構成を支援する窓口を配置する。
2017年第1四半期には、Cisco Startのネットワーク製品向けの運用管理ソフト「FindITネットワークマネジメント」(日本語版)も出荷する。専用のプローブ(情報収集)ソフトをインストールしたパソコンをLAN上に配置して運用する。複数のプローブから情報を吸い上げて一元管理するマネージャ機能も提供する。価格は、サブスクリプション型でデバイス単位で課金する。10デバイスまでは無償で利用できる。