Zuora Japanは10月13日、都内でサブスクリプションビジネス支援の取り組みに関する記者説明会を開催した。
Zuoraは、従来からの製品販売のビジネスモデルから、サブスクリプション型ビジネスモデルへの変革支援を行う企業として、「RBM(リレーションシップビジネスマネージメント)」を提供している。米国ではGM、Ford、Schneider Electricなどの大手企業が採用している。国内の採用事例として、同日、東芝のグローバルIoTサービスのビジネス基盤に、ZuoraのRBMが採用されたことを発表した。
Zuora Japan 代表執行役社長 桑野順一郎氏は、自動車業界を例に「フォードは製造販売からモビリティカーやカーシェアリングなどのサービスモデルを打ち出し、サブスクリプションモデルに移行しつつある」(桑野氏)と説明。われわれの日常生活やビジネスシーンにサブスクリプションサービスが増加しつつあると強調した。桑野氏は、航空業界やコンシューマ市場、IoT分野まであらゆるビジネス市場がサブスクリプションビジネスを採用している現状を踏まえて、「(IoT分野なら)データに付加価値をつけて、定額制や従量課金、アドオンやアップグレードなどサブスクリプションモデルで収益化を図れる」と述べた。
東芝のRBM採用については、東芝自身が2015年に「モノ+こと」へとビジネスモデルの転換を始めたことを背景に、短期間で立ち上げが可能なソリューションとしてRBMの採用に至ったことを明らかにした。「Zuoraは、800社を超える顧客からのさまざまな課金モデルの要望に応えるため、80カ月間毎月バージョンアップを繰り返している。つまり、800社以上のノウハウを蓄積している」(桑野氏)
現在国内20社強の顧客を抱えるZuora Japanだが、販売チャンネルとして、直販、三井情報および日立ソリューションズによる販売サポート体制を有する。また、料金の請求や回収といった包括サポートを実現するための決済処理サービスとして、GMOペイメントゲートウェイと協業している。販売サポートや決済処理サービスを拡大するため、現在複数企業と交渉中だという。国内において、RBMの採用企業数を「今後1年間で50社へ増やすことが目標」(桑野氏)とした。
Zuora Japan 代表執行役社長 桑野順一郎氏
Zuora創業者兼CEO Tien Tzuo氏は、自身がSalesforce.comの11番目の社員だった2002年頃にビジネスのアイディアに気付き、2007年に同社を起業。現在は800社以上の顧客を抱えるまでに至ったと語る。「われわれはサブスクリプションエコノミー時代の始まりを迎えている」と語るTzuo氏は、各調査企業によるサブスクリプション化の動向について次のように説明した。
80%の顧客は新しい消費の方法に期待し、50%のフランス人は従来の“所有”から“利用”モデルにシフトしている。80%のドイツ企業はサブスクリプションへの取り組みを始め、米国では2000年に25兆円規模だったサブスクリプションへの支払いが2015年には50兆円まで増加している。「グローバルの成長企業は、従来モデルからサブスクリプションモデルへの変革を始めている」(Tzuo氏)
Zuora 創業者兼CEO Tien Tzuo
さらに2000年時点のFortune 500に名を連ねた企業の52%が、買収や統合により消え去り、企業の平均寿命は75年(1955年)から15年(2015年)まで短縮されたことを強調した。半数以下の生き残った企業として、Tzuo氏はいくつかの大手グローバル企業の事例を紹介。「GE(General Electric)は製品ではなくデジタルサービスを売っている。IBMは多くのコンピュータ製品を売ってきたが、今ではWatsonというコグニティブサービスを売る企業だ」(Tzuo氏)と語り、変革の重要性をアピールした。
また、名前を挙げた企業に共通するパターンとして“製品から離れている”ことを指摘している。「AmazonやGoogleは製品ではなくリレーションシップ型ビジネスを行っている。さらにUberなどは創造的破壊者としてビジネスに参入している。これらが次世代で成功する企業だ」(Tzuo氏)
同時に、顧客の変化も次のように指摘した。「(名を連ねた企業の多くは)顧客のニーズを理解している。例えばAからBに移動する場合、ガソリンや車の駐車場を気にせず『成果』を得るように、顧客が成果主義に変わった」(Tzuo氏)。このようにビジネスの枠組みが変化し、人々は製品を購入するのではなく、サービスや経験を契約して企業との関係を構築していく世界に変わっていくという。
他方で、既存の製品販売型モデルを採用してきた企業に対しては、「顧客を中心とした手順に作り替えなければならないが、既存のERPシステムではサブスクリプションに対応できない。リレーションチェックという新しいシステムに対応するため、Zuoraを起業した」とTzuo氏は社製品をアピールした。
RBMはSaaSベースで稼働し、製品販売型モデルからサブスクリプションモデルへの変革を支援する。既存のERP/CRMなどのシステムでは対応できない価格設定や見積もり、売上計上などを包括的にサポートする基盤だ。4月に日本語版をリリースし、UIの日本語化や「月末締め翌月末払い」のような日本独自の商習慣に対応している。
「RBM」日本語版では日本の商習慣に対応する
Tzuo氏は、調査企業による調査結果として、サブスクリプション管理システム市場は10兆円以上の価値があり、日本は世界第2位のサブスクリプション管理システムの市場になると考えているという。現在の日本市場はIoT分野が注目を集めているが、Tzuo氏が訪日した印象として「日本の企業は既存製品をスマート化するのが得意だ。この(IoT市場)分野でリーダーになる可能性を秘めている」と所見を述べた。Zuoraは今後も日本市場に対して積極的に投資を続けていくという。