IBMは米国時間10月17日、Quest Diagnosticsと提携し、新サービス「IBM Watson Genomics from Quest Diagnostics」を米国の地域におけるがん専門医に提供すると発表した。米国におけるがん治療のおよそ70%はこれらの専門医によって支えられている。
今回の提携は、がんの精密医療を進展させ、米国各地での治療に役立てることが目的だという。
このサービスの立ち上げにより、IBMとQuest Diagnosticsは「IBM Watson」の持つ認知コンピューティングの力と、Quest Diagnosticsの腫瘍分析における専門知識を組み合わせることになる。同サービスにはメモリアルスローンケタリングがんセンター(MSK)も協力している。MSKは臨床的エビデンスを集積した「OncoKB」データベースへのアクセスをWatsonに提供する。また、ハーバード大学とマサチューセッツ工科大学(MIT)が共同で運営するブロード研究所もゲノムシーケンスの解析能力を提供する。
このサービスは、研究所での腫瘍細胞のシーケンス解析と、その遺伝子構造の分析を活用し、標的療法や臨床試験に結びつけられそうな変異を特定し、関連する医学文献や臨床研究、その他のデータと照らし合わせる。このようにして同サービスは毎月、およそ1万件の学術論文や、100件の新しい臨床試験データを処理することになる。医療の専門家がこういった関連データすべてをレビューする場合、そのプロセスは何週間もかかるのが一般的だ。
Quest Diagnosticsの最高医務責任者(CMO)であり、シニアバイスプレジデントでもあるJay G. Wohlgemuth氏は今回の発表のなかで「精密医療によってがんの治療方法に変化が起こっており、がん患者に新たな希望がもたらされている」と記した。さらに、「しかし、患者に合った精密医療を導き出すうえで必要となるゲノムのシーケンス解析や腫瘍の分析は、一筋縄ではいかない場合もある。このサービスによって、Quest Diagnosticsの持つ高度な腫瘍分析能力と同組織が培ってきたデータベース、Watsonの認知コンピューティング能力、MSKの持つがん治療の豊富な専門知識が結集される。これは、従来の遺伝子サービスを、がんの標的治療を見つけ出すためのより優れたアプローチへと飛躍させると信じるに足る、強力な組み合わせだ」と記している。
IBMはQuest Diagnosticsとの提携により、今回初めてこのサービスを全米の患者や医師に向けて広く利用可能にする。Quest Diagnosticsは全米の約半数の医師と医療機関に向けてゲノムのシーケンス解析能力の提供とがん診断を実施するとともに、米国におけるがん治療の推定70%を担っている地域のがん専門医と協力している。IBMは6月、米退役軍人省と連携し、がんに罹患している退役軍人の治療に、Watsonを利用したゲノムのシーケンス解析を用いるようにすると発表している。
IBM Research and Cognitive SolutionsのシニアバイスプレジデントであるJohn Kelly3世氏は今回の発表のなかで、「がんコミュニティーをリードする臨床専門家や病理学専門家との連携によって、がんという病気に関して世界がより豊富な知識を有するようにり、多くの患者が恩恵を受ける可能性がある」と記している。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。