目指す市場の異なる「Slack」と「Microsoft Teams」、実際に競合するのか

Ed Bott (Special to ZDNet.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎 2016年11月10日 07時30分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 ダビデとゴリアテの戦いのように、力は弱いが果敢な挑戦者が巨大な敵を倒す物語は万人に好まれる。Microsoftが2016年11月第1週に、チーム内コラボレーション用コミュニケーションサービス「Microsoft Teams」をリリースした際、これを報じた記事の大半がこのサービスと「Slack」と比較したのは、それが理由だろう。

 Slackは自らのサービスが弱小で挑戦者の立場にあることを認めており、その状況を楽しんでいる。その証拠に、Slack自身がこの騒動に参加している。New York Timesに全面広告を掲載して、Microsoftがこの市場に参入したことを「歓迎」し、上から目線のアドバイスを進呈するという騒ぎだ。

 しかし、注意すべき点がある。SlackとMicrosoft Teamsは、機能を表面的に比較すれば似ているが、目指す市場はまったく異なっている。

 乱暴に言ってしまえば、Slackは単独の製品であり、Microsoft Teamsは機能の1つなのだ。その違いは極めて大きい。

 Slackは1つのことだけに長けている。New York TimesのFarhad Manjoo氏はSlackを「最終的に電子メールに取って代わる可能性のある、仕事用のメッセージングアプリ」と呼んでいるが、Slackはこの目的にかけては非常に優秀だ。

 Slackは登録すれば誰でも無料で利用でき、しかも非常に簡単に使い始めることができる。このため、フリーミアムモデルで小規模チーム向けのクラウドサービスを提供している他の企業と同じく、Slackも、一部の製品ユーザーが全体の費用を負担する構造になっている。

 そのことは数字を見れば明らかだ。Slackは最近のブログ記事で、同社のサービスには400万人のアクティブユーザーがいると発表した。同社によればそのうち100万人が有料の顧客で、1ユーザーあたり年間80~150ドルを支払っている

 この値段には、電子メール機能や、オンラインファイルストレージ機能、Officeソフトなどは含まれていない。Slackとよく組み合わせて使われる「Google Apps」の利用料も加えれば、年間費用はさらに60~120ドル増え、1ユーザーあたり140~270ドルになる。

 それに対し、企業向けの「Office 365」の利用料は、もっとも安価なプランの場合で1ユーザーあたり年間60ドルであり、これには「Exchange」の電子メール機能や「OneDrive for Business」のストレージ1Tバイト分、「Skype for Business」が含まれており、そこにMicrosoft Teamsが付いてくる。Microsoft Office一式が利用できる「Office 365 Enterprise E3」でさえ、1ユーザーあたり年間240ドルだ。

 少なくとも理屈の上では、これはかなり割安だと言えるのではないだろうか。

 そうかもしれない。ただし残念ながら、既存のSlackの顧客がMicrosoft Teamsに乗り換える可能性は低い。これは、Office 365には、組織外のメンバーをチームに参加させる手段がないためだ。この機能はロードマップでは予定されているが、これが実現されない限り、Microsoft Teamsは組織内のチームでしか利用できない。

 もちろん、外部のメンバーについてもOffice 365のライセンス費用を負担すれば、この問題を克服できる。ただその場合でも、Microsoft Teamsに外部のチームメンバーさせるための、異なるライセンス体系やログインアカウントを用意する必要があるだろう。Microsoftは無料サービスを提供する予定はないと断言しており、ゲストアクセスを可能にするためには、何らかのライセンスの仕組みが必要になる。

 Microsoftは将来、外部のゲストと連携するためのオプションを提供することになるだろうが、Office 365のライセンスモデルを考えれば、フリーミアムモデルのSlackのように簡単な利用モデルになることはあり得ない。

 Microsoft Teamsは、Office 365の機能の1つとして、8500万人の有料ユーザーを引き留めておくことを目的として設計されている。すでにOffice 365を全面的に利用している顧客にとっては、この機能を利用し始めるのは簡単だ。

 しかし、小規模企業やフリーランス、動きの速い組織にとっては、使いやすいものではない。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んだ方に

関連ホワイトペーパー

連載

CIO
ITアナリストが知る日本企業の「ITの盲点」
シェアリングエコノミーの衝撃
デジタル“失敗学”
コンサルティング現場のカラクリ
Rethink Internet:インターネット再考
インシデントをもたらすヒューマンエラー
トランザクションの今昔物語
エリック松永のデジタルIQ道場
研究現場から見たAI
Fintechの正体
米ZDNet編集長Larryの独り言
大木豊成「仕事で使うアップルのトリセツ」
山本雅史「ハードから読み解くITトレンド放談」
田中克己「展望2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
松岡功「今週の明言」
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
林 雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
大河原克行「エンプラ徒然」
内製化とユーザー体験の関係
「プロジェクトマネジメント」の解き方
ITは「ひみつ道具」の夢を見る
セキュリティ
エンドポイントセキュリティの4つの「基礎」
企業セキュリティの歩き方
サイバーセキュリティ未来考
ネットワークセキュリティの要諦
セキュリティの論点
スペシャル
エンタープライズAIの隆盛
インシュアテックで変わる保険業界
顧客は勝手に育たない--MAツール導入の心得
「ひとり情シス」の本当のところ
ざっくり解決!SNS担当者お悩み相談室
生産性向上に効くビジネスITツール最前線
ざっくりわかるSNSマーケティング入門
課題解決のためのUI/UX
誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~
「Windows 10」法人導入の手引き
ソフトウェア開発パラダイムの進化
エンタープライズトレンド
10の事情
座談会@ZDNet
Dr.津田のクラウドトップガン対談
Gartner Symposium
IBM World of Watson
de:code
Sapphire Now
VMworld
Microsoft WPC
Microsoft Connect()
HPE Discover
Oracle OpenWorld
Dell Technologies World
AWS re:Invent
AWS Summit
PTC LiveWorx
吉田行男「より賢く活用するためのOSS最新動向」
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
中国ビジネス四方山話
ベトナムでビジネス
日本株展望
企業決算
このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]