海外コメンタリー

Linuxの2017年--大きな成果に伴う大きな責任

Steven J. Vaughan-Nichols (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2017-01-06 06:00

 Linuxは2016年に誕生から25周年を迎えた。Linuxの始まりは、学生のプロジェクトだった。今ではあらゆる場所で使われている。スマートフォンからスーパーコンピュータ、ウェブサーバ、クラウド、自動車に至るまで、あらゆるものがLinuxで動いている。

 これまでは唯一の例外だったエンドユーザーでさえ、Linuxに移行しつつある。「Android」は、今やもっとも人気のあるエンドユーザー向けOSだ。また「Chromebook」も人気を集め始めている。実際、「Fedora」や「openSUSE」「Mint」「Ubuntu」などの従来からあるLinuxデスクトップさえ、勢いを増している。

 もちろんこれまでも、エンドユーザーはLinuxを利用してきた。ただ単に、ほぼすべての著名なウェブサイトや、多くのSaaSアプリケーションが、Linuxで動いていることに気づいていないだけだ。

 Microsoftでさえ、とうとうLinuxに熱心に取り組むようになってきている。同社は2016年にLinux Foundationに参加している。

 あらゆることがうまくいっているにも関わらず、筆者は心配している。なぜなら今や、単なるスクリプトキディではない本物のハッカーが、こぞってLinuxやその他のオープンソースのコードに狙いを付け、脆弱性を探しているからだ。

 オープンソース界のリーダーであるEric S. Raymond氏は、何年も前に「十分な数の人の目があれば、あらゆるバグは洗い出される」と述べており、この考え方は「Linusの法則」とされている。この法則は、Linuxを今日の成功に導き、オープンソースソフトウェアを前進させてきた重要な概念の1つだ。

 しかし、この法則が成立するのは、バグを発見し、コードを修正しようとする人の目が十分にある場合だけだ。コード1000行(KLOC)当たりのエラーの数は、一般に15~50件であり、厳格なチェックとテストを行った場合で3件程度だと言われている。Linuxのコードは、カーネルだけでも1600万行を超えている。かけ算をしてみるといい。

 Linuxには、2016年だけで2件の重大なセキュリティホールが発見された。ディスク暗号化メカニズム「LUKS」を利用するためのスクリプトのバグと、Linuxカーネルのメモリサブシステムに存在した脆弱性「Dirty COW」だ。重要度は低かったものの、他にもLinuxのバグは見つかっている。Linuxの名誉ために言えば、これらの問題は発見後ほぼ直ちに修正された。

 問題を速やかに修正することに関しては、LinuxはAppleやMicrosoft、その他のどの商業ソフトウェアベンダーよりも優れている。しかし、数字の話をすると、まだ修正を要するバグが最低でも約3000件残っている。


Linuxを攻撃から守ることは、これまで以上に重要になっている。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    「デジタル・フォレンジック」から始まるセキュリティ災禍論--活用したいIT業界の防災マニュアル

  2. 運用管理

    「無線LANがつながらない」という問い合わせにAIで対応、トラブル解決の切り札とは

  3. 運用管理

    Oracle DatabaseのAzure移行時におけるポイント、移行前に確認しておきたい障害対策

  4. 運用管理

    Google Chrome ブラウザ がセキュリティを強化、ゼロトラスト移行で高まるブラウザの重要性

  5. ビジネスアプリケーション

    技術進化でさらに発展するデータサイエンス/アナリティクス、最新の6大トレンドを解説

ZDNET Japan クイックポール

注目している大規模言語モデル(LLM)を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]